保守中道は今回で3連敗を喫し、流れを変えられず
参院選 辺野古移設反対の高良氏当選
参議院選挙が21日に投開票され、沖縄選挙区は玉城デニー知事を支持する革新政党・団体の応援を受けた無所属新人・高良鉄美氏が当選した。自民は、普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対が最大の争点となる各種選挙では、苦戦続きだ。(沖縄支局・豊田 剛、写真も)
安里繁信氏、「基地」より「振興」を訴え
投票率は過去最低、県民の政治離れが加速
琉球大学名誉教授で憲法学者の高良氏が当選したことで、昨年9月の知事選や2月の県民投票、4月の衆院3区補欠選挙に続き、辺野古移設反対の民意が連続して示された。投票率は49・00%。16年の前回選挙の54・46%を5・46ポイント下回り、国政選挙では補選を除くと過去最低となった。当選を受け高良氏は、「沖縄県民の民意はこれまで何度も示されてきた。民意を政権や全国に伝えていくことがとても重要だ」と述べ、辺野古移設阻止に向けて取り組んでいく考えを示した。
高良氏は辺野古移設阻止を最大の争点に掲げ、憲法改正反対と消費税の10%への増税反対を強く主張した。宮古島に配備済みの陸上自衛隊を含め、先島諸島への自衛隊配備については明確に反対を表明。日米安保についても破棄すべきだという持論を持っており、玉城知事よりも急進的な考えの持ち主だ。
「多くの方に支えられ、感謝に尽きる選挙戦だった。いろいろな所で、沖縄の政治を変えてほしいという熱量はすごく感じた」と語った。
一方の自民は、日本青年会議所会頭や沖縄観光コンベンションビューロー会長などを歴任した物流・広告会社シンバホールディングス会長の安里繁信氏を擁立。公明と維新の推薦を受け、若者や無党派層の獲得を目指したが及ばなかった。
保守中道は今回の参院選で3連敗を喫した。これについて、自民党沖縄県連の中川京貴会長は、「普天間飛行場の危険性除去という原点は変わらない。在沖米軍基地の整理縮小のために辺野古移設を容認する方針に変わりはない」と強調した。
選対本部長を務めた西銘順志郎氏は「総決起大会をきっかけに、大きなうねりがあった。厳しい選挙ではあったがかなり頑張った」と安里氏を評価。別の選対幹部は、運動量はこちら側が圧倒的に多かったが「見えない大きな壁と戦っているようだった」と振り返った。
革新系も順風満帆なわけではない。翁長雄志知事誕生の原動力となった「オール沖縄」は、主要な名護市長選や宜野湾市長選で敗北し、離脱する政治家や企業グループも出た。ただ、昨年の翁長氏の死去で、辺野古移設反対の勢いを取り戻し、「基地は造らない方がいい」と考える無党派層にも浸透した。
辺野古移設の原点は、普天間飛行場の一日も早い危険性除去だ。その最も確実な方法として辺野古代替施設の工事が進んでいる。評論家の篠原章氏は、「政府にも責任の一端はある。誠意をもって説明責任を果たすべきだ」と苦言を呈する。
今回の選挙結果を受けて、玉城知事は「改めて辺野古反対の民意が示された」と歓迎した。2015年以降、辺野古移設をめぐる政府と県の対立は法廷に持ち込まれ、16年の最高裁判決では埋め立ての適法性が認められた。ところが、その後も対立は収まる気配はなく、今回の選挙の期間中にも、辺野古移設をめぐっての7件目の訴訟が県によって提起された。
玉城氏は、選挙応援演説の大半を辺野古移設反対に費やした。国との対立をあおるばかりだ。そのうえ、県は移設反対のキャラバンを全国で展開している。
安里氏が「基地をめぐっての右と左の対立は平成時代に終わりにして、令和時代は前に進め、半世紀先の新しい沖縄振興計画をつくっていこう」と呼び掛けたのは、不毛な対立からは何も生まれないという危機感からだった。「県民がますます政治離れをしていく」と安里氏は危機感を募らせた。ただ、今回の参院選の投票率と結果を見る限り、県民の政治離れの加速を止められる兆しはない。
基地問題が争点になる沖縄独特の政治環境について、前出の篠原氏は、「有権者にとって基地は目の前にあるものとして認識しやすいが、経済は身近に認識できない」と指摘。「『政治イコール基地問題』と受け止められるのではないか」と語った。
参院選開票結果
【沖縄】(1-4)
高良 鉄美(65)
298,831票 元琉球大学法科院教授無新安里 繁信(49)
234,928票 元日本青年会議所会頭自新玉利 朝輝(60)
12,382票 飲食業経営無新磯山 秀夫(72)
11,662票 元会社員諸派








