24日に県民投票、躍起の辺野古移設反対派

中道保守は自主投票で静観

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の沖縄県名護市辺野古への移設の是非を問う県民投票が14日、告示され、24日投開票される。同飛行場の返還を含む米軍整理縮小計画が出されてから23年、辺野古移設に絞って県民の民意が問われるのは初めて。「賛成」「反対」「どちらでもない」の中から選択する。法的拘束力はないが最多得票が全有権者の4分の1に達した場合、知事は首相と米に結果を通知する。自主投票で静観する中道保守に対して、有権者の過半数「反対」を目指して活動を展開する革新側は躍起となっている。(沖縄支局・豊田 剛)

投票率が低迷なら「反対」過半数割れも

24日に県民投票、躍起の辺野古移設反対派

反対派による公道を占拠しての違法な活動が目立つ=沖縄県那覇市

 県民投票が告示された14日から、那覇市のある高校の近くの道路で、朝早くから「県民投票 反対に○(マル)を」と書かれた幟(のぼり)を持った人々が数多く現れ、手を振っている。その中の中年の女性が通り掛かる高校生に「何歳」と声を掛け、18歳でないことが分かると、「残念」と悔しがった。

 県民投票は、18歳以上が有権者だ。住民の直接請求に基づいて制定された条例によって実施されるため、公職選挙法は適用されない。県民投票条例12条は、投票運動について「自由とする。ただし買収、脅迫等による県民の自由な意思が制約され、又は不当に干渉されるものであってはならない」と定めている。

 14日の告示前から、県内各地では辺野古移設に反対する革新系団体らが街宣車を走らせ、ほぼ全戸にチラシを配布した。チラシの発行人は、玉城デニー知事を支える革新政党、労組、一部企業で構成されるオール沖縄の「新基地建設反対県民投票連絡会」で、「辺野古新基地NO! 反対に〇印を」と書かれている。

 投票用紙には「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てについて」という説明書きがあるが、オール沖縄が配布する前出のチラシの中の投票用紙のイメージ写真には、「普天間飛行場の代替施設として」という言葉が抜け落ちている。また、県が作成したテレビCMにも「普天間飛行場」という言葉はない。普天間飛行場の近くに住む70代の男性は、「意図的なものを感じるし、公平性に欠ける」と不快感を示し、「県民を分断するだけの県民投票には行かない」と言い切った。

24日に県民投票、躍起の辺野古移設反対派

県民投票改正案の採決で、自民党会派は賛成、反対、退席と三つに割れた=1月29日、沖縄県議会

 告示日の14日以後、反対派は県内各地で精力的に集会を開いている。14日には、辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力が、辺野古区と那覇市で大規模な集会を開いた。昨年9月の知事選同様、オール沖縄の中核を担う共産と社民などの政党色を排除した運動を展開している。

 数多くの「討論会」が基地反対派や地元メディアの主催で行われたが、いずれも登壇者の大半は基地反対派の論客だ。ある討論会に参加した那覇市在住の40代の女性は、「賛成する人の話を聞いてみたかったが、埋め立て反対ありきの感じがした」と不完全燃焼の様子だ。

 県民投票条例で、県知事は「客観的かつ中立的」な活動を義務付けられている。投票の呼び掛けはするものの、公の場で移設反対を訴えることはできない。玉城氏は告示日前日の13日、沖縄県議会での演説で「辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向けて、ぶれることなく全身全霊で取り組む」と述べ、普天間飛行場の辺野古移設に反対する考えを改めて強調。14日には自らチラシを配りはしたが、移設反対を訴えることはなかった。

 県民投票連絡会の呉屋守将共同代表は14日の街頭演説で、「県民投票は最後まで相手の顔が見えない戦い」だと話した。県議会の自民、公明、維新の3会派は自主投票を決めており、告示期間中の目立った動きはないからだ。

 自民は辺野古移設を容認する立場。ただ、県民投票の実施をめぐり、所属議員内で意見が三つに割れ、自民党県連会長が辞任に追い込まれた。移設「賛成」を推進することによる反発を警戒し、静観する考えだ。県連の島袋大幹事長は13日の記者会見で「普天間飛行場の危険性除去が置き去りにされていることを筆頭に解決されていない問題が多すぎる」と自主投票の理由を説明した。

 普天間飛行場の危険性除去のためには「移設を推進する以外にない」という考えが多数を占める一方、「あまり騒ぎ立てると相手の土俵に乗っかる結果となる」という慎重論もある。

 自公両党の動きが低調なこともあり、投票率が低くなることは避けられない。1996年に実施された「米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しを問う県民投票」の投票率は59・53%。直近の全県選挙である昨年9月の知事選の投票率は63・24%で、玉城氏は過去最多の約39万6千票を獲得して当選した。

 玉城氏を支える革新系県議は、「投票率6割は超え、知事選の得票を超えたい」と話す。投票率が低迷すれば「反対」票は過半数に満たない可能性がある。「『やらなかった方がよかった』という結果を招いてはならない」と同県議は語った。