知事選の行方占う沖縄市長選 22日投開票

「大規模アリーナ」建設が焦点

 任期満了に伴う沖縄市長選が22日に投開票される。有権者数は14日現在、11万171人。新人で元市議の諸見里宏美氏(56)=希望、民進、共産、自由、社民、沖縄社会大衆党推薦=、再選を目指す現職の桑江朝千夫氏(62)=自民、公明、維新推薦=の無所属2氏が激戦を展開中だ。秋の県知事選の行方を占う選挙だけに、国政選挙並みの注目を集めている。(那覇支局・豊田 剛)

経済発展へ早期実現訴え/桑江氏

「財政逼迫」と凍結を主張/諸見里氏

知事選の行方占う沖縄市長選 22日投開票

出陣式で演説する桑江朝千夫候補=15日、沖縄県沖縄市胡屋十字路

 市長選は政府・与党と翁長雄志知事の「代理戦争」の様相を帯びており、秋の知事選の前哨戦と位置付けられる。「選挙イヤー」の沖縄の選挙はこれまで、南城、名護、石垣の3市と八重瀬と南風原(はえばる)の2町で首長選が行われているが、翁長知事派は南城の1勝のみ。現職が再選されれば、翁長氏を支持する革新系「オール沖縄」勢力への大打撃になる。

 自民党本部は沖縄市長選を重要選挙と位置付け、全力を挙げて翁長氏を追い込む構えだ。これまで二階俊博幹事長、塩谷立選対委員長、竹下亘総務会長、岸田文雄政調会長ら党幹部が次々と激励に訪れている。20日には小泉進次郎筆頭副幹事長の沖縄市入りが予定されている。

 公明党も太田昭宏前代表や斉藤鉄夫選対委員長が沖縄市に入り、支持母体の創価学会を中心に現職支援に力を入れる。

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討論会で発言する諸見里宏美候補=7日、沖縄県沖縄市のコザミュージックタウン

 一方の諸見里陣営は、翁長氏を支える「オール沖縄」から全面的な応援を受ける。ところが、強力な支援を受けたい翁長氏が膵臓(すいぞう)の腫瘍(しゅよう)摘出手術に伴う療養に入ったため、応援は望めない。15日の出陣式に翁長氏の姿はなく、代わりに富川盛武副知事が駆け付けた。

 最大の争点は、1万人規模の多目的アリーナ建設だ。すでに着工しており2020年に完成する予定。アリーナは地上5階建ての鉄筋コンクリート造りで総面積は2万6200平方㍍、県内最大の収容数を持つ屋内施設となる。バスケットボールの強豪、琉球ゴールデンキングスのホームとして使用する。

 12日の総決起大会では桑江氏が「アリーナが新しい街をつくり、そこからビジネスチャンスも生まれてくる。全国的に市の価値が高まる」と強調し、早期実現を訴えた。もう一つの目玉プロジェクトである東部海浜開発事業(泡瀬干潟埋め立て事業)に関しては「東部リゾート計画を着実に前に進め、私の手で完成させていく」と強調した。

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アリーナの建設予定地=沖縄県沖縄市山内

 総決起大会にはサッカーJリーグの創設に携わった日本バスケットボール協会の川淵三郎エグゼクティブアドバイザーが登壇し、満場の来場者を驚かせた。川淵氏は「ここでフィギュアスケートの羽生結弦選手が見られるかもしれない。バスケットボールW杯も来る」と夢を語った。

 アリーナ建設の総事業費は約170億円と見積もられている。国の高率補助を得るためには、在沖米軍の再編への協力が不可欠だ。

 沖縄市には米空軍嘉手納基地があるが、桑江氏は日本の安全保障の観点から基地の存在には理解を示す。同氏は16年8月、米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)倉庫群とキャンプ瑞慶覧のスクールバス関連施設を市内の嘉手納弾薬庫知花地区に移設することについて受け入れを表明した。桑江氏は「基地整理縮小、返還後の振興発展を図るためには受け入れはやむを得ない」と市民に理解を求めている。

 これに対して諸見里氏は、嘉手納爆音訴訟原告団の事務局長を務める。県や市民団体と連携し「米軍機の住宅地上空の飛行禁止を国に強く求める」ことを公約に掲げる。

 出馬記者会見では「将来的な沖縄の全基地撤去を目指し運動を続ける」と主張。米軍施設受け入れについては、「住民合意がない受け入れは許されない」と反対の立場を取る。ただ、翁長氏が米軍再編を容認する立場であることから、受け入れ反対の姿勢はトーンダウンしている印象は否めない。

 諸見里氏はシングルマザーとしての経験から、「待機児童ゼロ」「中学卒業までの医療費無料化」「給食費無料化」など、子育て支援を中心政策として訴え、支持の拡大を図っている。

 15日の出陣式では「市政を奪還しなければならない。市民が主役の沖縄市をつくろう」と訴えた。焦点のアリーナについては、市の財政が逼迫(ひっぱく)するので住民の合意形成が必要との理由で計画の凍結を主張。東部海浜開発は、桑江氏の前任で革新系の東門美津子元市長が反対したため、開発には消極的だ。

 桑江陣営は、「相手候補が当選したらアリーナ建設が頓挫し、ワールドカップも来なくなる。観光にとっても経済発展にとっても大打撃だ」と危機感を募らせる。

 自民党県連幹部は「沖縄市を落とせば、名護と石垣で勝ったことがすべて吹っ飛ぶ。知事選に向けて絶対に落とせない選挙だ」と強調。名護と石垣と同様に「期日前投票が伸びれば勝てる」と分析している。