自衛隊に米軍基地の管理権を

國場幸之助衆院議員に聞く

尖閣諸島を指定離島に、沖縄振興は国家戦略

 沖縄にとって選挙イヤーの2018年前半最大の山場である名護市長選で、政府・与党が推す渡具知武豊氏が初当選を果たした。自民党副幹事長の國場幸之助衆院議員に名護市長選の評価、米軍基地問題、尖閣諸島政策について聞いた。(聞き手=那覇支局・豊田 剛)

自衛隊に米軍基地の管理権を

國場幸之助衆院議員

 ――今年に入り、3週連続で政府・与党対オール沖縄の構図の首長選が行われた。どう評価するか。

 自民党副幹事長の立場で、毎週、自民党の全幹部が参加する役員連絡会に出席しているが、地方選挙の中で沖縄の選挙が一番注目される。それだけに、1月の南城市長選で現職が敗れたことに衝撃を受けた。これで危機感を持って、党として名護市長選に取り組んだ。名護市長選の勝因の一つは、経済的閉塞(へいそく)感だ。地域経済が疲弊している中で、争点を経済や地域振興にした戦略が奏功した。前回、自主投票だった公明が協力してくれたことも勝利の要因だ。

 ――革新陣営は辺野古移設について「争点隠し」があったと主張している。

 そうは言っても、相手候補は基地問題を前面に出し、新聞も「争点」としていた。実際、全国から共産党の運動員が入っており、稲嶺氏は基地問題を訴えていた。ただ、争点を決めるのは名護市民だ。市民のリアリティとして、好調な県経済にあって名護だけが置き去りになっていることから、渡具知氏に対する期待があった。

 沖縄の基地問題がややこしくなり、普天間飛行場の県外・国外移設と言い出したのは、鳩山民主党政権の時からだ。本来、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意に基づいて嘉手納基地以南は整理縮小・統合され、人口が少ない沖縄本島北部に集約される計画だ。普天間飛行場は、キャンプ・シュワブ(名護市)の施設内に再統合されるのである。

 名護市長選でマイクを握ったり、地域を歩いたりした中で感じたのは、辺野古移設に単に賛成か反対かだけではなく、「もう問題は決着済み」と考える市民が多かったことだ。実際、最高裁の判断も出ていて、辺野古の護岸工事も進んでいる。

 さらに、稲嶺氏に今後4年任せても基地建設を止められるのだろうかという素直な疑問があった。「新基地を造らせない」と言っている翁長知事に対しても、埋め立て承認撤回を含め、切れるカードを使わずに、本気で止める気があるのかという不信感がある。

 ――いかにして沖縄県民に基地負担軽減を実感させるか。

 日米地位協定の改正はもちろん大事だが、米軍の専用施設の管理権を日本が担うべきだ。本土はどこの基地でも米軍と自衛隊が共同利用している。英国とオーストラリアの場合は自国軍の中に米軍がいる。日本政府がコミットし、自衛隊が米軍基地の管理権を持てるようにすることが大事だ。

 南西地域は安全保障・国防の最前線ということには今後も変わりない。幸いにも沖縄の本土復帰後、自衛隊の撤去運動は起きていない。沖縄だけが基地を管理できないということはない。

 ――翁長知事に対する政府や党本部の評価はどのようなものか。

 2014年の知事選当時は「革新よりはまし」「元々自民党だった」という声があった。現在は、共産党に牛耳られているという評価だ。革新陣営の間でも共産党に押されすぎという声が出ている。

 翁長知事が当選したのは、大田昌秀知事と同様に沖縄問題を再提起したという意味があるのではないか。ただ、問題解決の術はまったく持っていなかった。本来、政治は結果責任なので、市民活動家のようなやり方では責任を持てず、交渉ができない。

 地方経済で見ると、沖縄県は日本一好調だが、それは稲嶺恵一、仲井真弘多両知事が4期16年間築いてきた流れにあるからだ。経済を牽引(けんいん)しているのは観光。だからこそ、米同時多発テロ事件の時に観光が落ち込んだことからも分かるように、観光産業の最大インフラは平和と安全だ。沖縄の場合は、海上保安庁、陸海空の自衛隊が安全を守っているから観光産業が成り立っている。

 ――中国が尖閣諸島の領有権を主張し、領海・領空侵犯を繰り返している。政府はどう対応すべきか。

 尖閣諸島は無人島のままにしてはいけない。1940年まで人は住んでいた。沖縄には160の島々あり、そのうち有人島は39ある。沖縄振興特別措置法が定める「指定離島」(無人島も含む)は54島あるが、その中に尖閣諸島は一つも含まれていない。1日も早く指定離島にすべきだと考えている。

 尖閣諸島の環境・生態系や文化財調査、慰霊などの名目で県や石垣市の職員、専門家あたりが定期的に上陸するようにすべきだ。抽象的に「固有の領土」だと言っても意味がない。

 ――政府や国会議員の沖縄に対する見方はどうか。

 全国の沖縄に対する関心が薄れてきている。戦争体験のある有力政治家がいなくなり、沖縄振興策に対して懐疑的な見方が増えている。

 大事なのは国家戦略としての沖縄振興という視点だ。アジア諸国に近い安全保障の最前線にあるという地理的優位性を持つ。だからこそ、沖縄振興は単に地域振興ではなく国家戦略である。世界第6位の領海・排他的経済水域面積を持つ日本で、沖縄県の海洋面積は東京に次いで2番目に広い。この一点をとっても沖縄県は日本に貢献していると考えることができる。


=メモ=

こくば・こうのすけ

 1973年、那覇市生まれ。早稲田大学卒。2000年、県議会に史上最年少で当選。12年に衆議院議員に初当選。衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会、国土交通委員会理事。自民党副幹事長(沖縄担当など)。