FC琉球のイベント 陸自車両の出展中止
地元紙の圧力に屈した可能性
サッカーJ3のFC琉球が19日に沖縄県沖縄市で開いた「全島サッカー1万人祭り2017」で、陸上自衛隊は車両の出展要請を受けたが直前になって出展を断られた。FC琉球側が自衛隊に反対する地元マスコミなど一部勢力に屈したことが背景にあるようだ。(那覇支局・豊田 剛)
クラブ側は「関係各所に配慮」と弁明
過去にも自衛隊イベントの妨害
FC琉球が観客動員1万人を目指す「1万人祭り」の目玉のイベントの一つが「はたらく車大集合!」だ。同クラブ本拠地の沖縄市の沖縄県総合公園で警察などの車両とともに、陸自車両が武器を外した状態で出展される予定だった。また、自衛隊の活動を紹介するパネル展示、乗車体験も予定されていた。
公開を予定していた陸自の車両は、03式中距離地対空誘導弾、82式指揮通信車、軽装甲機動車、73式小型トラックの4台。
11日には自衛隊沖縄地方協力本部がフェイスブックで「4車両を展示します!」と告知。翌日には産経新聞が、「沖縄で陸上自衛隊の装備一般公開へ 和らぐ“アレルギー” 駐屯地外で初めて」と題する記事を紹介していた。
「琉球新報」「沖縄タイムス」の両県紙は15日、自衛隊出展を疑問視する記事を掲載、「自衛隊の宣撫工作」というコメントを紹介した。FC琉球がホームページで自衛隊車両出展の中止を発表したのは同じ日のことだ。
「一部マスコミで報道されております自衛隊車両の出展に関しては、8/19の試合対戦相手が東日本大震災で被害に見舞われた福島のチームということもあり、災害時の支援車両という観点で出展調整の段階でありましたが、先行報道を受けての県内関係各所からのご意見に配慮し、出展中止とさせて頂くことに致しました」
関係各所がどこなのかは明らかにしていない。ただ、地元紙の批判を受けて「関係各所」が抗議に動き、クラブがイベント会社を通じて、自衛隊沖縄地方協力本部に出展の取り止めを通告したということだ。
FC琉球は「『はたらく車』を実際に見て触れる機会を創出することで、特に子供たちに対しては、将来の職業観を育んだり、夢や目標を持つきっかけになれば」という。だが、自衛隊はそれに該当しないというわけではあるまい。
中止になった理由としてクラブ側は、災害支援車両以外は想定していなかったと弁明している。
これに対してイベント会社の担当者は、「企画段階で出展は災害支援車両に限定するとは伝えていない」と強調、「ここまで騒動が大きくなるとは想定しなかった」と話した。計画当初は米軍にも出店の打診があったという。また、予定されていたテレビ局の中継車の出展もキャンセルになった。
なお、沖縄本島における陸自車両の駐屯地外展示は実際、初めてではない。これまで、県主催の防災訓練をはじめ、沖縄市の「東部まつり」、豊見城市の「グッジョブとよみわくわくワーク」で展示されている。
自衛隊関係者は、「災害支援で活躍する自衛隊だけを排除するのはおかしい」と指摘。マスコミ報道で収拾が付かなくなって、『復興支援』という苦し紛れの理由を後付けしたのではないか」と推測した。
実際、イベントの当日、会場に展示されていたのはパトカー、白バイなどの警察関係車両、三輪タクシー「トゥクトゥク」などわずか数台だけ。復興支援の意図に気付いてほしいというのは無理な話だ。
これまで沖縄では、自衛隊のイベントで数々の妨害があった。2008年には、那覇駐屯地内での演奏が決まっていた那覇市内の小学校吹奏楽部の出演が教職員組合の抗議でキャンセルとなった。また、1972年に沖縄県が本土復帰した当時、自衛隊員が成人式に参加できなかったこともあった。
ところがここ数年、緊急患者空輸、不発弾処理、さらには、県外の災害支援などの活躍から、自衛隊への見方が好転してきた。8月6日に投開票された与那国町長選挙では、自衛隊推進者2人による一騎打ちになった。このことからも、多くの県民にとって自衛隊アレルギーがなくなってきていることが分かる。
自衛隊をめぐっては、八重山諸島に予定されている自衛隊配備を一部の市民団体が強く反発しており、2紙も配備に懐疑的な論調を展開する。しかも、県内のマスコミが自衛隊に有利な報道をしないという「協定」もある。今回のケースでは、FC琉球のメディアパートナーとなっている2紙の圧力に屈した可能性が高い。







