那覇市議選は翁長知事派が過半数割れ、3市に続き地元でも敗北
自民除名の現職4人落選、メディアと結託も奏功せず
任期満了に伴う那覇市議会議員選挙(定数40)が9日、投開票され、翁長雄志知事を支持する与党が過半数を割った。翁長派に打撃となったばかりでなく、知事と連携する城間幹子那覇市長にとっても厳しい市政運営が待ち受けている。(那覇支局・豊田 剛)
安保や防災訴え、自民は3議席増
2014年11月に城間市長が就任して以来初の市議選だった。城間氏は、4期の半ばまで同市長を務めた翁長氏の後継で、名護市の稲嶺進市長と共に翁長県政を支えている。今回の市議選は、城間市政に対する審判だけでなく、翁長県政に対する評価に直結するものと位置付けられていた。それだけに翁長派には打撃となった形だ。
投票率は51・20%で13年の前回選挙より8・94ポイント下回った。城間市長を支える与党系が18議席で、半数の20議席を下回った。内訳は、与党側が共産7人、社民3人、地域政党の社会大衆党2人、民進1人、元自民系無所属(新風会)3人、無所属2人。
一方、野党は自民7人と保守系無所属1人。中立は公明7人、維新1人、無所属6人となった。
与党・革新系は今年実施された県内3市(宮古島、浦添、うるま)の市長選連敗に歯止めをかけ、普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設阻止への流れを逆流させないようこのテーマを前面に出し選挙戦を繰り広げた。
それに加勢するかのように地元紙の琉球新報と沖縄タイムスは、那覇市政と直接関係ない辺野古移設の是非を問うアンケート結果を掲載。メディアと結託した辺野古移設阻止を争点化して挑んだが、市民からは事実上の「ノー」を突き付けられた格好だ。
さらに、共産、社民、社大、民進、新風会で構成される与党でも明暗がくっきり分かれた。独り勝ちした感があるのは共産だ。現職4人と新人3人を擁立し、前回より1議席増やし全員が当選した。告示後、小池晃書記局長が2度も来沖して精力的に応援演説をし、「『オール沖縄』を支える最大の一員」と訴えた。選挙戦で「オール沖縄」を前面に出して主張したのは共産党だけだった。
那覇軍港の移設については、翁長氏と城間氏は日米両政府が合意した浦添市移設を支持しているが、共産は無条件返還を訴えている。今後、与党内でどのように調整していくか、移設位置をめぐって那覇港管理組合や浦添市とどのように折り合いをつけていくかが注目される。
一方、「オール沖縄」陣営で苦杯をなめたのは新風会だ。14年の知事選で辺野古移設に反対する翁長氏を支援して自民党から除名された現職4人(うち2人は新風会を離脱)が落選した。中でも、前議長の金城徹氏(63)は、新風会の全県展開を目指す議員団のまとめ役を担っていた。
新風会の立場で出馬し当選した翁長氏の次男、翁長雄治(たけはる)氏(30)は全体で2番目の得票で当選した。金城氏ら落選した4人はそのあおりを受けたものと見られる。また、雄治氏が出馬するに当たって出馬を断念した議員もいただけに、翁長氏に対する不満増幅が予想される。また、民進党沖縄県連の花城正樹代表(38)は落選した。
1週間前の東京都議選の影響が心配された自民は、公認・推薦候補16人が全員当選した前回に遠く及ばなかったが、公認・推薦14人のうち7人が当選。改選前の4人から3人増やした。中でも、最年少30歳の奥間亮氏は2期目の若手で、トップ当選した。同氏は那覇市が一括交付金を使用して建設した龍柱について現市政を厳しく問いただし、存在感を増している。
自民党からは、安全保障や防災、安心安全な生活を訴える候補も少なくなく、2人の元パイロットが当選した。
航空自衛隊パイロットを辞して出馬した大山孝夫氏(36)は「低海抜地域が多い那覇市だからこそ、東日本大震災のような危険と隣り合わせにある」と訴え、「防災に強いまちづくり」を提案。知事就任以来、自衛隊を訪れない翁長氏および城間氏にどう迫るのかが注目される。
また、県ドクターヘリのパイロットを務めた吉嶺努氏(40)も「災害対策や病気予防を強化することによる福祉拡充」を訴えた。
選挙結果を受け城間市長は「たいへん厳しい結果だった。残念だった」と述べ、今後議会にしっかり対応していきたいと語った。
その一方で、野党・自民党の山川典二県議は「来年の知事選、那覇市長選に向けて弾みがつく結果になった」と評価。「キャスチングボートを握る無所属議員の取り込み次第では城間市政をさらに追い込むことは可能だ」と強調した。