待機児童数が人口比で全国一の沖縄県、変化に対応できぬ県政
那覇市の保育園でミスマッチ、3歳以上は定員割れ
保育園に通いたくても通えない沖縄県内の待機児童の数は、2253人。人口比では全国一多く、全国平均の約7倍になる。沖縄県議会文教厚生委員会は18日、専門家を招致して認可外保育園の処遇改善について話し合った。保育関係者は、県のリーダーシップと職員の意識改革を強く求めた。(那覇支局・豊田 剛)
末広会長「危機意識が足りず無責任」
「認可外」に頼るも財政支援の格差大
現在、沖縄県には516の認可園と390の認可外保育園がある。認可外保育園の割合は全国平均23%を大きく上回り、そこに約1万4000人の園児が通っている。
県子育て支援課によると、4月1日現在の待機児童数は前年同期比283人減の2253人となった。待機児童の約8割が2歳以下だ。
そのうち、那覇市の待機児童数は559人から200人に大幅に減少した。市担当課は、「県や国の補助事業を活用した認可園新設や増改築などで受け入れ数が増加したため」と言うが、手放しで喜べない現状がある。
那覇市では4月1日の時点で、50園で約700人が定員割れする事態に至っている。4月の市内の認可保育園の定員は、約8500人。認可園新設などによって前年同月比で定員は1700人ほど増えたが、入園者は7820人にとどまった。そのうち、定員割れは、今年度新設された17園のうち15園と際立って多いのが特徴だ。
一方で、保育士不足で園児を受け入れできない施設もある。認可園に入れない、いわゆる「潜在的」待機児童は那覇市で約2000人に上ると推定される。
沖縄県は、認可外保育園に頼らざるを得ないにもかかわらず、認可外保育園の重要性を十分に認識していないようだ。沖縄県認可外保育園連絡協議会の末広尚希会長の調べによると、0歳児1人当たりの年間公費負担は認可保育園で183万6000円、認可外施設は1万4000円。約130倍の違いだ。給食費も認可園408円、認可外99円と大きな開きがある。
こうした格差が生じていることについて県の担当課は、「保育を必要とする児童については認可保育所等で保育を行うということをこれまでも基本として進めている」と述べ、財政支援の強化は困難との見方を示している。大きな格差が埋まる兆しはない。
こうした中、18日には県議会の文教厚生委員会が保育園の格差是正について集中議論した。そこに、那覇市の認可外保育園の園長で市子育て支援保育施設連絡協議会の真栄城美登里会長と末広会長を参考人招致した。
真栄城氏は、同僚が「役所で『認可外保育園を好きでやっているのでしょ』と皮肉を言われた」と明かした。両氏は「現在のシステムでは認可園に移行したくても簡単に補助金がもらえない」などの問題点を指摘、県議会を通じて県に働き掛けるよう求めた。
新設認可園の一つ、那覇市首里にある首里ライオンの子保育園も3歳以上で定員割れを起こしている一方で、0~2歳児で入所待ちが生じている。同園長も務める末広氏は3月末、那覇市役所を訪れ城間幹子市長に改善を求めた。
特にニーズの高い0~2歳の定員変更を求めたが、市側は予算変更などの面で「すぐに対応することは困難」と返答。末広氏は「当事者意識がなく、危機意識も足りないと感じた」と本紙に語った。
末広氏は「2月の段階から定員割れすると警告したが、役所は『たらいまわし』のような状況で誰も責任を持って取り組もうとしない」と指摘。選挙のたびに聞かれる「待機児童ゼロ」の公約の実行力不足を痛感している。
また、母親が早期職場復帰を果たすためには、0歳児のうちに入所させざるを得ない環境も問題だと末広氏は指摘する。0歳のうちに保育園に預けなければ満1歳で入所するのも困難で、認可園に通う兄姉も退園を迫られる。
那覇市が10日発表した「2016年度市民意識調査」で、25項目の政策のうち、「子育て支援と就学前教育・保育」は重要度で2番目に位置付けられたにもかかわらず、満足度は「交通体系の整備」に次いで最も低い。ミスマッチに対する不満を反映した結果だ。
末広氏は昨年11月、認可外保育園サミットを開催。①4%の賃上げを含む認可園対象の保育士処遇改善策を認可外保育園に適用する②一定の基準を満たした園を準認可園とみなす県独自の制度導入③県が強いリーダーシップで市町村を指導し、格差が出ないようにする④などを求めた提言書を県や市町村に提出した。
2010年には待機児童数がワーストワンだった神奈川県横浜市は、林文子市長のリーダーシップで待機児童問題を劇的に解決した。横浜市の事例を調査した末広氏によると、「市役所は待機児童がいる全家庭に電話をし、状況把握と問題解決に努めた」。沖縄でも強いリーダーシップによる待機児童解消と保育園の格差是正が求められている。







