経済成長の継続か、福祉の重視か うるま市長選 23日投開票

 沖縄本島中東部のうるま市の市長選が23日に投開票される。現職の島袋(しまぶく)俊夫氏(64)=自民、公明推薦=に元県議で新人の山内末子氏(59)=民進、社民、社大、共産、自由推薦=が挑む。2014年11月の知事選で翁長(おなが)雄志氏が当選して以来、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設をめぐって対立している政府・与党と県との「代理戦争」の様相を呈している。(那覇支局・豊田 剛)

国とのパイプで飛躍発展―現職、島袋俊夫氏

高卒まで医療費無料化を―新人、山内末子氏

経済成長の継続か、福祉の重視か

 うるま市は沖縄県で3番目に人口の多い自治体だ。12年前に2市2町が合併して誕生した。五つの有人島を抱え、産業に乏しく、完全失業率は7・49%で県内11市でワーストだ。

 均衡ある発展を目指した県は約40年前からうるま市と沖縄市にまたがる中城湾港の開発を計画。そのうち、うるま市側の新港地区は加工交易型産業の拠点として整備され、中城湾港の一部が1999年に特別自由貿易地域に指定された。現在は港湾地区全体が国際物流拠点産業集積地域に指定され、関税優遇が適用される。企業立地促進と貿易振興を目的にした特例だ。

 同地域にはハイテク企業を中心に90社が進出し、過去8年で9000人以上の雇用を創出した。前回2010年国勢調査の完全失業率18・17%から15年の調査で10ポイント以上改善した。石破茂・前地方創生担当相は3日、うるま市で行った講演で「改善率は間違いなく日本一だ」と述べた。

経済成長の継続か、福祉の重視か

出陣式で演説する島袋俊夫氏(中央)=16日、沖縄県うるま市

経済成長の継続か、福祉の重視か

出陣式で演説する山内末子氏(中央)=16日、沖縄県うるま市

 うるま市は3期連続で保守が市政を担っている。前回13年は無投票だったので、今回は8年ぶりの市長選となる。主な争点は経済政策と子育て支援策。経済成長路線を継続するのか、それとも、福祉重視の政策に方向転換するのかが注目される。

 新人の山内氏は、小池百合子都知事が打ち出す「都民ファースト」にあやかり「市民ファースト」のスローガンで同市初の女性市長誕生をアピールする。うるま市に合併する前の旧石川市で初めての女性市議として4期務めた後、県議の3期目途中で市長選に立候補した。

 公約では小中学生の給食費無料化、中学卒業まで無料の医療費の高校卒までの拡充を目玉に掲げる。基地政策では、「オスプレイの配備撤回を求めた沖縄『建白書』の理念の実現」に取り組むことを掲げ、辺野古移設には強く反対する。辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前に頻繁に足を運び、座り込み行動に参加している。告示後の第一声では、「夢を語ってこそ市民が夢を描ける」と語り、「ようやく相手候補の肩に手が届くところまできた」と意気込んだ。

 島袋氏は、2期8年で積み上げてきた実績を基に、市の均衡ある発展を目指す。旧庁舎・市有地にはホテルや大型ショッピングセンターの誘致が決まっており、「これで人と経済の流れが生まれる」と期待する。

 10年期限の合併特例債は本来ならば終了しているが、東日本大震災の影響で5年間、先延ばしになった。島袋氏は「あと3年残っている。その間にインフラ整備、学校の全面改築工事を行う」と強調。さらに、「インフラ整備や子育て支援など事業の種まきをしてきた。国とのパイプを生かして、市を飛躍発展させる」と誓った。

 うるま市は県内主要政党8党のうち、自民、公明、社民、自由の4党の県代表の出身地であることから、各党は知事選や国政選挙並みに力を入れている。来年11月の知事選に向けて弾みをつけたい考えだ。

 山内氏には、共産党の小池晃書記局長が7日、応援に駆け付け、「翁長県政と力を合わせて、オスプレイ撤去、新基地建設ストップを掲げる市長を実現しよう」と呼び掛けた。民進党の辻元清美衆院議員も支援演説を行った。

 また、翁長氏は12日の総決起大会で共産、社民などの革新政党・労組を念頭に「登壇している人々とは兄弟のようにして政治活動している」と発言。山内氏について「男性を凌駕(りょうが)する政治家」と評価した。

 一方の島袋陣営は、山内氏の子育て政策の実現性には懐疑的だ。自民党県連の照屋守之会長は「市の財政のどこを削れるというのか」と疑問視。桑江朝千夫・沖縄市長は「こんなばらまき政策をしたら市は4年以内で財政破綻する」と批判した。

 1月の宮古島、2月の浦添両市長選に続く3連勝を目指す自公側は、自民党の古屋圭司、公明党の斉藤鉄夫両選対委員長が島袋氏の出陣式に出席、引き締めを図った。

 市選管によると、15日現在の選挙人名簿登録者数は9万6428人(男性4万7869人、女性4万8559人)である。


うるま市長選立候補者

 島 袋 俊 夫 (64)  自民、公明推薦           現 職

 山 内 末 子 (59)  民進、社民、社大、共産、自由推薦  元県議