自民党沖縄県連、辺野古移設の推進を明文化

翁長県政との相違決定的に

照屋県連会長「信頼関係失う国と県」

 自民党沖縄県連は4月8日、党大会を開催し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)のキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)への移設について、「推進」を明文化した。これは「あらゆる選択肢を排除しない」というこれまでのあいまいな姿勢から大きく舵(かじ)を切ったものだ。一方、翁長雄志知事は「あらゆる手段を使って移設に反対する」見解を表明。3月25日には知事就任後、初めてシュワブのゲート前の反基地集会に参加し、マイクを握った。自民党県連と県との見解の相違は決定的となった。(那覇支局・豊田 剛)

知事は基地前集会に初参加、移設容認の地元の声聞かず

自民党沖縄県連、辺野古移設の推進を明文化

頑張ろう三唱をする照屋守之会長(右から3人目)、中川京貴幹事長(同2人目)ら=8日、那覇市のロワジールホテル

 自民党沖縄県連は、これまで「辺野古移設を含めあらゆる選択肢を排除しない」として、辺野古移設を事実上容認しつつも県外移設の可能性も残していた。ところが、4月の県連大会で、辺野古移設が唯一の選択肢であることを明確にしたのだ。
 大会で配布された「県連の取り組み」と書かれた文書は「普天間飛行場の危険性の除去を実現するには(最高裁)判決に従って辺野古移設を容認する以外に現実的な方策は見いだせない。翁長知事の抵抗で、予定されていた作業は2年も遅れる結果となり、今後も抵抗が予想され、工事作業のさらなる遅れも予想される」と指摘した上で、普天間飛行場の危険性除去・早期返還、米軍基地の整理縮小を図ることを求めた。
 自民党県連が特に批判の声を強めたのは、最高裁判決が「決着ではない」という県の認識だ。また、普天間飛行場の負担軽減策に取り組む姿勢が見えないことにも向けられた。
 「知事はあらゆる手段で反対しているため、修復不可能な段階に入った。予算や税制などであらゆる影響が出ている」と中川京貴幹事長が語れば、照屋守之県連会長は「沖縄の政治はおかしい方向に向かっている。県が一方的に批判し国と対立している。子が親に対するのと同じで、信頼関係が完全に失われている。大きな不幸だ」と批判した。
 大会アピールでは「革新勢力、琉球独立論者と協調する翁長県政では、沖縄の米軍基地問題の解決は絶対に出来ないことが県民の前に明らかになった」ことも確認した。
 県は5日、工事の一時中止と再申請を求める行政指導の文書を沖縄防衛局に送った。ただ、岩礁破砕許可が3月で期限を迎えたものの、沖縄防衛局は新たな許可申請をせずにボーリング調査や汚濁防止膜の設置作業を続けている。名護漁協が漁業権を放棄したことを根拠に、県との事前協議や岩礁破砕許可申請は必要ないとの考えからだ。

自民党沖縄県連、辺野古移設の推進を明文化

座り込み1000日集会で大声を上げる沖縄平和運動センター議長の山城博治被告(左)=1日、名護市辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前

 一方、翁長氏は3月25日、ゲート前の反基地集会に参加した。2014年12月に知事に就任して以来、初めてだ。辺野古移設に伴う埋め立て承認について「あらゆる手段で撤回を力強くやる」と決意表明。「誰かさんはしょっちゅう『日本は法治国家』と言っているが、『放置』国家だと思う」と安倍晋三首相を批判。また、「国際情勢の大きな流れで、アメリカと中国が手を結ぶかもしれないではないか。ロシアと中国が手を結ぶかもしれないではないか」などと日米同盟に疑義を示唆する発言が目立った。
 自民党の県議の一人は、「翁長知事は工事を止めることができなかった。いよいよ『オール沖縄』の支持者から突き上げを食らい、苦肉の策としてゲート前の抗議活動に参加した」と分析した。
 1日には、キャンプ・シュワブのゲート前の座り込み1000日の抗議集会が開かれ、参加者は「政府は地元の民意を聞け」と叫んでいた。しかし、約300人の参加者のうち、辺野古区から参加した住民は2人しかいなかった。
 ゲート近くに住む男性(50歳代、匿名希望)は、「辺野古の住民のほとんどは条件付き容認」で、反対運動に起因する交通渋滞、違法駐車、早朝から大声を上げることに迷惑していると話す。翁長知事はいまだに久辺3区(辺野古、久志、豊原)の住民と正式に話し合いをしたことがない。「知事には地元住民からホンネを聞いてもらいたい」。これが辺野古周辺住民の切実な願いのようだ。