翁長氏勢力図塗り替えられるか、「オール沖縄」に亀裂も

来年知事選の前哨戦、9首長選・8市町村議会選

 沖縄県では今年、自衛隊配備が予定されている宮古島市長選(1月22日)を皮切りに、米軍施設がある浦添市とうるま市に加えて6町村の首長選、那覇市を含む8市町村での議会選が相次いで実施される。これらは来年開催される県知事選の前哨戦との位置付けでもある。翁長知事の支持母体の「オール沖縄」に亀裂が入る中、知事の勢力図が塗り替えられるのか否か、注目される。(那覇支局・豊田 剛)

争点 陸上自衛隊の配備/宮古島市長選

争点 那覇軍港受け入れ/浦添市長選

翁長氏勢力図塗り替えられるか、「オール沖縄」に亀裂も

宮古島市役所=宮古島市平良西里

 今年は県レベルの選挙は行われないが、来年早々には普天間飛行場(宜野湾市)の移設先の辺野古がある名護市長選、同年11月には県知事選が控えている。

 これらの県政に直結する選挙を前に、保守・革新陣営ともに今年の諸選挙で勝利し、良い流れを作りたい考えだ。現在、11市長のうち、那覇と名護を除く9人は保守系であるため、宮古島、浦添、うるまで再選されることに保守陣営は注力している。

 一方、翁長知事派の「オール沖縄」陣営は、宮古島市長選で自衛隊容認、浦添市長選で那覇軍港移設容認の候補を支持した。このため、革新勢力から不満が噴出している。

●宮古島市長選

 宮古島市長選は1月9日現在、4人が出馬表明している。保守系、革新系ともに候補者選定が難航し、分裂状態になっている。

 現職の下地敏彦氏(71)は沖縄の保守系を代表するベテラン政治家で、翁長氏にとっては目の上のたんこぶの存在。2期の実績を基に、保守系市議や経済団体から支持を受けて3選を目指す。自衛隊の宮古島配備計画にも昨年の早い時期に受け入れを表明するなど、強いリーダーシップを示した。ただ、一括交付金の使い方をめぐって百条委員会で追及されていることがどう影響するか。

 市長に不信感を抱く前市議会議長の真栄城徳彦氏(67)は、宮古島市選出の自民党県議、一部保守系および中立市議6人の支援を受けて出馬。「停滞する市政に新しい風を吹かせたい」と意気込む。

 医師の下地晃氏(62)は翁長氏を支える「オール沖縄」陣営から要請を受け出馬する。自衛隊配備には反対しない方針で、維新の市議も支援する。

 前県議の奥平一夫氏(67)は、革新系の選考に異論を唱え、自らこそが真の「オール沖縄」候補だと主張。政党の推薦はないが、革新系市議が支援する。

 争点は陸上自衛隊の宮古島配備だ。明確に反対する奥平氏を除いて3者は賛成だが、温度差がある。

 下地敏彦氏は、中国の領海領空侵犯を念頭に、配備を全面的に支持する。真栄城氏も自主防衛の観点から自衛隊の必要性を認める一方、「市民の判断を仰ぐ必要がある」とし、住民投票の実施を視野に入れている。下地晃氏は、重武装しないという条件付きでの容認で、住民投票も検討している。

 翁長氏はこれまで、革新候補の一本化に動こうとしなかったが、告示直前の8日になって「オール沖縄」に反旗を翻した奥平氏支持を打ち出した。知事支持派の革新勢力に対する配慮がにじみ出ている。

●浦添市長選

 那覇市に隣接する浦添市の市長選は2月12日投開票の予定。保守系現職に翁長氏を支える「オール沖縄」陣営候補が挑む。昨年1月に行われた宜野湾市長選と同様、自公連立対翁長知事派の構図になる。

 現職の松本哲治氏(49)は前回、無党派の立場で出馬、保革相乗り候補と中道現職を破って当選した。今回は、自公の推薦を受けて出馬することを有権者がどう判断するか。

 市議の又吉健太郎氏(42)は、「オール沖縄」の推薦で出馬するが、政党の推薦は受けない方針。県政を支える革新政党と元市長の「そうぞう」系が支持する。出馬会見に翁長氏は出席していない。

 争点は那覇軍港の浦添埠頭(ふとう)沖への移設だ。松本氏は那覇軍港を条件付きで受け入れる姿勢。移設推進の県と那覇市と歩調を合わせる。

 一方、又吉氏は、軍港移設容認の立場だが、7日に行われた地元ラジオ局主催の立候補予定者討論会では、「民意を明確にするために住民投票を実施したい」との考えを示した。

 こちらも翁長氏の動きが注目される。軍港移設をめぐっては又吉氏よりも松本氏に近いだけに、難しい選択を迫られる。さらに、昨年の宜野湾市長選では革新系候補が知事との一体感を出しすぎたことへの反省から、「オール沖縄」という言葉を封印する方針だ。

●その他

 4月23日には、海兵隊の実動部隊が所在するうるま市で市長選が行われる。3選を目指す保守系現職と革新系県議の対決となる見通しだ。

 今年は3市のほか6町村で首長選、8市町村で議員選挙が実施される。中でも、翁長氏のお膝元でもある那覇の市議選(7月9日投開票)の結果は、今後の県政運営を大きく左右する選挙として注目される。