追い詰められた翁長雄志沖縄県知事

宜野湾市民訴訟控訴審が結審、2月7日判決

辺野古違法確認訴訟、国勝訴判決が後押し

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、米軍普天間飛行場(宜野湾〈ぎのわん〉市)の名護市辺野古(へのこ)沖への移設に伴う埋め立て承認を撤回した問題で、宜野湾市民が翁長氏を訴えた訴訟の口頭弁論が10日、福岡高裁那覇支部で開かれ、結審した。判決は来年2月7日に下される。(那覇支局・豊田 剛)

普天間固定化押し付け、「民意」自ら踏みにじる

追い詰められた翁長雄志沖縄県知事

支援者を前に訴訟の報告をする徳永信一弁護士=10日、沖縄県宜野湾市の真栄原公民館

 この訴訟は、普天間飛行場の早期移設を求めるとともに、翁長知事の責任を追及するのが目的。翁長氏が埋め立て承認を取り消したことによって、市民の安全安心な暮らしが脅かされ、将来返還される期待を失わせたとして、宜野湾市民112人が県と翁長氏を訴えていたが、6月14日の判決では請求が却下された。

 判決文には「原告らが、本件承認がされた時点で普天間飛行場が移設され、その危険性が除去されるとの期待を抱いたとしても、それはいまだ具体性に乏しいのである」と記された。

 今月10日に行われた控訴審の口頭弁論では、原告代理人の徳永信一弁護士は意見陳述で「訴訟人に当事者となる資格がある」ことを訴えた。根拠としたのは、9月16日、福岡高裁那覇支部で国が県に勝訴した辺野古・違法確認訴訟の判決文だ。

 同裁判では、「普天間飛行場の騒音被害や危険性、これによる地域振興の阻害は深刻な状況であり、普天間飛行場の閉鎖という方法で改善される必要がある」という認識のもと、「普天間飛行場の被害を除去するには本件新施設等を建設する以外にはない。言い換えると、本件新施設等の建設をやめるには普天間飛行場による被害を継続するしかない」と結論付けた。

 日米両政府の合意に基づいて辺野古沖に普天間飛行場の代替施設を設置しなければ、同飛行場は返還されないことを改めて確認した。

 徳永氏は、「この事実認識は控訴人らの認識とまったく同じ」と主張。請求却下の一審判決では、「深刻な騒音被害や危険除去を目的としていることを失念し、飛行場周辺住民が現に受けている騒音被害と墜落の危険性を軽視したものだ」と断言した。

 埋め立て承認撤回をめぐる国と県の訴訟は最高裁に上告され、年末または年度末にも判決が出る見通しだが、たとえ、国が勝訴したとしても翁長氏が処分を取り消さない可能性がある。これについて、徳永氏は、「翁長知事が現実に取り消し処分を取り消さない限り、本件訴訟を続ける『訴えの利益』を有している」と強調した。実際、翁長氏は福岡高裁那覇支部の裁判長からの和解勧告に従わなかった「前科」がある。

 「翁長知事が不作為の違法を確認する判決を受けてもそれに従わない場合、制度が無意味になるだけでなく、裁判所の権威まで失墜させることになり、ひいては日本の国全体に大きなダメージを与えてしまう懸念がある」

追い詰められた翁長雄志沖縄県知事

平安座唯雄氏

 10日夕、宜野湾市で開かれた支援者集会で原告団長で宜野湾市民の安全な生活を守る会の平安座唯雄(へんざただお)会長は、「私どもは普天間飛行場をどうしても動かしたいという思いだ。移設にブレーキをかけているのは日本政府でも米国政府でもなく、沖縄県の翁長県政だ」と指摘。「翁長氏にいつまでも県政を任せるわけにはいかない」と述べ、勝訴することで早期辞任に追い込みたい考えを示した。

 続いて、大きな拍手で迎えられた徳永弁護士。国勝訴の判決が追い風となって勝利するシナリオをこう描いている。

 「最高裁で国が勝訴した場合、知事が良識を示して取り消せばそれで終わる。ただ、万が一、県が勝つようなことがあれば、宜野湾市民の裁判で逆転勝訴し、やはり取り消せという判断を出すのではないか。そうすればすぐに国は工事ができる」

 支援者の一人は、「翁長知事が辺野古移設をどんな手段を使っても阻止するということは、宜野湾市民やその周辺の住民に普天間の固定化を押し付けるもの。知事が普段主張している『地元の民意』を自ら踏みにじっている」と憤った。

 17日には、普天間飛行場の周辺住民3417人が、米軍機の飛行差し止めや損害賠償を求めた第2次普天間爆音訴訟判決が那覇地裁沖縄支部で言い渡された。

 判決では、飛行差し止めの原告の訴えを退けた一方で、「騒音が受忍限度を超えている」と認定し、うるささ指数(W値)75以上の原告に月額7000円、W値80以上の原告に月額1万3000円、総額約24億5800万円の損害賠償の支払いを国に命じた。将来分の請求は却下した。飛行場周辺住民のこれまでの損害賠償を認めたことは、今回の訴訟に追い風となる。

 「国と裁判長と市民の会がタッグを組んで翁長氏を追い詰めてチェックメイト。翁長氏の(県知事としての)命はどんなに長くても2月7日」

 徳永氏は訴訟の行方に自信を示した。