沖縄県八重山諸島で大規模な離島防災訓練を実施
離島に欠かせない自衛隊、災害時の即応支援で存在感
沖縄県八重山諸島で3日、大地震と津波を想定した大規模な離島防災訓練が実施された。県と八重山地域3市町が主体となった沖縄県総合防災訓練で、116団体から約1200人が参加し、大地震発生時の対応を確認した。中でも陸海空の3自衛隊は災害時における即応支援面で存在感を示した。(那覇支局・豊田 剛)
河野統幕長「輸送ヘリ、LCACを有効利用」
県の総合防災訓練は毎年、9月初めに行われているもので、竹富町で開催されたのは今回が初めて。県内各地の消防や県警、第11管区海上保安本部、電力や電信などインフラに関わる企業、病院などが参加した。
また、陸海空の3自衛隊は約420人が離島統合防災訓練の一環として参加。防災関係機関との連携強化を図った上で、離島の地域特性を踏まえた対応能力の維持・向上を目指した。
訓練は、午後1時に八重山諸島南西沖を震源とするマグニチュード8・7の強い地震が発生したことを想定。竹富町で最大震度6強、石垣市と与那国町で震度6弱を観測し、約20分後に八重山諸島全域に津波が押し寄せるという設定で実施された。
竹富町は竹富島、西表島、波照間島など島嶼(とうしょ)で構成され、尖閣諸島にも近いこともあり、災害時における人命の安全確保やインフラ整備が急務になっている。川満栄長町長は、「1町多島という特殊性は沖縄県の縮図」と述べ、訓練を通じて県民の防災意識が高まることを期待した。
自衛隊は2014年から県の総合防災訓練に参加している。13年10月に伊豆大島が台風に見舞われた際、自衛隊が災害派遣したことがきっかけだ。
県主催の訓練に統合幕僚長が参加するのは、14年に続いて2回目。河野克俊統合幕僚長は、「島嶼部の防災は極めて重要で、インフラのアクセスは大事で、訓練で使われたような輸送ヘリ、LCAC(水陸両用輸送用エアクッション艇)を有効に利用したい」と述べた。また、国境に近い西表島などで統合訓練ができたことの意義を強調した上で、「県との連携を強化していくことが大切だ」と訴えた。
防災訓練の主会場では、背負い式の初期消火や海水を飲料水に変える装置を実演。さらには実際に炊き出しなどを行い、参加者にカレーライスを振る舞った。
海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」では、救急患者の治療の訓練が行われた。最高齢90歳の女性を含め3人が海上保安庁のヘリで洋上の輸送艦に運ばれ、負傷者を重症度、緊急度などによって分類するトリアージを経て、艦内の治療室で応急治療を受ける流れが確認された。約2時間の間に10機以上のヘリが着艦。滞りなく被災者を診察したり、安全な場所に避難させるプロセスを確認した。
水難事故のシミュレーションでは、海上保安庁がヘリからロープを吊(つ)り下げて行う救出訓練も行われた。
訓練で最も注目を集めたのが、車両、支援部隊や物資の輸送に使うLCACが現れた時だ。LCACが勢いよく水煙を上げながら港に上陸する姿に、地元の子供たちは歓声を上げていた。
訓練に参加した西表島出身の70代の女性は、「離島には総合病院がない。いつ何時、何があるか分からない。自衛隊がそばにいれば安心感がある」とうれしそうに話した。
昨年9月、台風21号が与那国島に壊滅的な被害をもたらした際、海上保安庁がすぐに被害状況を巡視艇から視察。被害状況を関係各所に伝えたり、必要物資を届けたりするなど、目覚ましい活躍を見せた。続いて、町の要請で陸上自衛隊の輸送ヘリも到着した。「離島地域にとって、自衛隊の存在は頼りになる」と金城信浩・与那国防衛協会会長は強調する。
防衛省は昨年11月、石垣市に対して陸上自衛隊の受け入れを要請した。同市議会6月定例会では、配備計画を求める請願と計画中止を求める請願が、共に反対多数で不採択となった。
配備をめぐって自民会派が分裂し、議会が硬直している中、反対派からは住民投票の実施を求める声が上がっている。受け入れの是非は、中山義隆市長の決断に委ねられる公算が大きくなっている。









