統合型リゾートで観光振興を
浦添市でシンポジウム
2020年東京五輪の開催決定で、わが国に統合型リゾート(IR)導入の機運が高まっている中、IRを起爆剤とした観光振興について考えるシンポジウムが1日、浦添市の国立劇場おきなわで開かれた。参加した県内外の実業家や政治家ら約200人はパネリストの討論を傾聴した。一方、カジノの合法化を目指す超党派の国会議員連盟が、15日に開催予定の臨時国会に「統合型リゾート(IR)推進法案」を提出する見通しだ。
(那覇支局・豊田 剛)
独自の自然・文化とホスピタリティ活用
「推進法案」臨時国会に提出へ/沖縄もカジノ招致に意欲
秋の臨時国会でIR推進法案が成立すれば、2年以内に実施法が新たに国会に提出され、成立・施行されれば2019年にもカジノ第1号が開業する見通しだ。それを受けて現在、ラスベガス・サンズ、MGMリゾーツインターナショナル(共に米ラスベガス)、メルコ・クラウン・エンターテインメント(香港)など、大手の統合リゾート運営会社が日本参入に関心を示している。受け入れ側としては、東京都、大阪府、沖縄県など十数カ所が招致に強い意欲を示しているといわれている。
こうした中、国際観光産業振興シンポジウム(主催・同実行委員会)が先月下旬から今月1日にかけて、東京、大阪、沖縄の3カ所で開催された。実行委員会は広告代理店の博報堂を主体としたもので、東京では、「アジア都市間競争に打ち勝つだけの“ヒト、モノ、カネ”を集約し、日本の経済成長を引っ張っていけるか」、大阪では「関西国際空港を拠点にいかに関西広域圏の観光整備をするか」が話し合われた。
沖縄県で開催されたシンポジウムでは「独自の自然と文化を持つ沖縄ならではの観光の在り方」「沖縄にIRは必要か」が主な議題となった。
シンポジウムのパネルディスカッションにはIR議連の島尻安伊子参院議員、那覇商工会議所参事の又吉章元氏、琉球大学観光産業科学部教授兼副学長の下地芳郎氏が参加した。
島尻議員は「オリンピックが(アベノミクスの)4本目の矢で、2020年に向けて何をどのように仕組んでいくかが大事になる」とした上で、「アジアの国々との人的交流を図る上でのソフトパワーがIR」で、「地域の安全保障になる」との見方を示した。
沖縄の自然と文化について島尻議員は「そのままにしていてはもったいない。来てもらって見てもらうにはどうしたらいいか。投資したいと思われる何かが必要」と課題を提案した。
又吉氏は「沖縄県はカジノ・エンターテインメント検討委員会を設置するなど、長い間、統合リゾートを調査している」ことを前提に、「外国人の滞在拠点となる都市型統合リゾートの導入」の必要性を訴えた。
下地教授は、「沖縄観光の持続的発展に寄与しなければならない。そのためには一流の質の高いコンテンツを見せる必要がある」とし、IRは有力な選択肢だとの見解を示した。
シンポジウムに先立ち、下地芳郎教授が基調講演を行い、沖縄県は成長戦略である「21世紀ビジョン」で示されているように「観光産業は2020年までの7年の間で大きく飛躍を遂げる」と述べた。具体的には、那覇空港ターミナルビルおよび那覇港クルーズターミナルビルが来年に完成すること。さらには、大型MICE施設、県立空手会館、Jリーグ規格のサッカー場が近年中に建設される予定で、20年を目途に那覇空港の第2滑走路が完成する。
自然と文化が調和した優しい技術と「ちむぐくる」(ホスピタリティ、思いやり)を生かすことが、沖縄が目指す観光の将来像だと説明。「本土復帰前には総合的娯楽施設であるカジノによる観光客誘致の計画が持ち上がったことがある」とし、外国人観光客誘致や観光産業成長のためにはカジノを含めた統合型リゾートが有益との見方を示した。
海外のIR運営会社からは成功例が報告された。日本進出を目指すラスベガス・サンズ幹部は、(1)ラスベガスではカジノによる収入よりも、カジノ以外の商業施設やホテルなどの収入の方が多い(2)統合型リゾートを誘致したシンガポールでは、観光による収入が3年間で8割増えた――と報告した。
マカオで統合型リゾート誘致に成功したメルコ・クラウン・アジア社の幹部は、「カジノによりむしろ世界一最も安全な都市の一つになった」と誇った上で、沖縄特有の歴史・文化、ホスピタリティと海岸リゾートという優位面を勘案すれば、沖縄はIRで成功すると太鼓判を押した。
シンポジウムに出席した一般財団法人沖縄エンターテインメントリゾートの西田健次郎代表は、「海外の成功例はとても刺激になる。2020年という限られた時間を考えると、沖縄市泡瀬の埋立地が有力な候補地となり得る」とカジノ誘致に意欲を示した。







