【社説】辺野古移設 設計変更不承認は無責任


辺野古の普天間飛行場代替施設の建設工事

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、同県の玉城デニー知事が、埋め立て海域にある軟弱地盤の改良工事に伴う政府の設計変更申請を承認しないと発表した。

 普天間の危険性を除去するためにも、辺野古移設は一日も早く実現しなければならない。工事を遅らせる玉城氏の姿勢は無責任極まる。

 国と県の法廷闘争へ

 辺野古沿岸の埋め立て工事をめぐっては、軟弱地盤が発見されたため、防衛省が昨年4月、県に設計変更を申請。設計変更は、地盤強化のため7万本超のくいを打つほか、護岸の形状を変更して作業を効率化するなどの内容だ。

 県は審査した結果、ジュゴンの生態系への影響が十分評価されていないと判断。軟弱地盤の建設工事では、実際に米軍基地として運用できるかどうか不確実だと指摘した。

 だがジュゴンに関しては、沖縄周辺から他の場所に移動したとの見方が強い。軟弱地盤の工事についても、国の基準に基づき「液状化はしない」とした防衛省の判断に対し、専門家は「十分検討しており妥当」と評価している。県の審査結果には首を傾げざるを得ない。

 設計変更不承認は、玉城氏が温存してきた最後の切り札だと言われる。玉城氏は2018年9月の県知事選で辺野古移設反対を掲げて勝利したが、政府は移設をめぐる法廷闘争で埋め立て承認の「取り消し」「撤回」など県が繰り出すカードを次々に無効化した。

 一方、玉城氏を支える超党派の「オール沖縄」はこのところ退潮傾向が顕著だ。保守勢力は徐々に距離を置くようになり、20年の県議選では自民党が伸長した。衆院選では名護市を含む沖縄3区で移設反対派が落選している。

 来年は名護市長選と県知事選を控える。玉城氏には不承認によって政府への対決姿勢を鮮明にし、反転攻勢の足掛かりとする狙いがあろう。

 しかし、辺野古移設は普天間の危険性を除去しつつ在沖米軍の抑止力を維持する唯一の解決策だ。移設工事が遅れれば、それだけ普天間の危険な状況が長引くことになる。

 普天間は住宅密集地に立地しているため「世界一危険な米軍基地」と言われる。万一、周辺住民を巻き込むような大事故が起きれば、日米安保体制にとって重大な打撃となりかねない。また、中国が台湾統一に向けて武力行使も辞さないとする中、在沖米軍の存在は重要性を増している。辺野古移設を妨げることは許されない。

 県の不承認に対し、政府は行政不服審査などの対抗手段を講じるとみられ、国と県が再び法廷で争うことになりそうだ。不毛な法廷闘争だと言わざるを得ない。

 理解し難い立民の反対

 30日投開票の立憲民主党代表選に立候補した4氏が、いずれも辺野古移設に反対していることも理解し難い。

 立民は党綱領で「健全な日米同盟」を唱えている。移設中止が同盟強化に資するとはとても思えない。