衆院選、自公と「オール沖縄」が2対2
10月31日に投開票された衆議院選挙の結果、沖縄では玉城デニー知事を支持し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力が3区と4区で自公に敗れた。辺野古移設反対でまとまっていた革新共闘に限界が見えてきている。(沖縄支局・豊田 剛)
3区では玉城知事の後継が落選、経済・振興で自公に勢い
31日午後11時すぎ、島尻安伊子氏の当確を伝えるテレビテロップが流れると、沖縄市の選対本部に集まっていた約100人の支持者から歓声と拍手が沸き起こった。事前の世論調査ではほとんどのメディアが島尻氏を「劣勢」と見ていたこともあり、逆転勝利に沸いた。
仲井眞弘多元知事が2013年12月、辺野古沖の埋め立て申請を承認して以来、沖縄の国政選挙では自公対「オール沖縄」の対立構図がはっきりしている。前々回の衆院選は「オール沖縄」が全勝、前回は4区を除いて「オール沖縄」勢が3勝した。今回、この勢力図を変えたのは、普天間飛行場の移設先を含む3区だった。
同区では19年、玉城氏が知事選に出馬したことを受けて補選が行われた。屋良朝博氏=立民=が元沖縄北方担当相の島尻氏=自民=に1万7000票の差を付けて勝利したが、今回は島尻氏がリベンジを果たした。沖縄市出身の比嘉奈津美参院議員は、「2年間、地道に地域に根差して活動してきた結果」と目を細めた。
今回、公明は九州比例で沖縄出身の金城泰邦氏を擁立した。選対本部長を務めた桑江朝千夫・沖縄市長は、「自公のタッグは前回よりも断然強くなり、1日ごとに感触が良くなっているのを感じた」と振り返った。
選挙戦序盤で菅義偉前首相が沖縄市で演説し、新型コロナ対策や貧困対策、沖縄振興で実績を出せるのは自公政権だけだと強調。辺野古には触れなかった。「あれ(菅氏の演説)で勢いがついた」と桑江氏。「終盤に相手に追いついて、最後に追い越す」という、選対が描いた通りの結果となった。
一方、玉城知事の後継・屋良氏は、政権交代の必要性と辺野古移設反対を中心に主張を展開したが、及ばなかった。屋良選対幹部は、「辺野古新基地建設反対と政府批判が思ったほど有権者に届かなかった」と肩を落とした。
4区は、選挙直前に復興相兼沖縄担当相に就任した西銘恒三郎氏=自民=が、知名度を生かし、前回選挙で獲得した唯一の保守議席を守り切った。市長選で自公が推す候補が負けた宮古島、南城、豊見城、糸満での影響が懸念されたが、11ある全ての市町村で西銘氏が得票で金城徹氏=立民=を上回る“完勝”となった。
比例では保革に明暗、革新共闘の限界を露呈する結果に
県庁所在地・那覇市を中心とする1区では3期続けて共産の赤嶺政賢氏が当選した。保守系では、5回続けて自民公認の國場幸之助氏と下地幹郎氏(無所属)が分裂する戦いとなった。一部経済界は下地氏の自民復党を求めたが、自民県連が応じなかった。
普天間飛行場など米軍基地を多く抱える2区は4人が立候補したが、事実上、宮崎政久氏=自民=と、引退したベテラン照屋寛徳氏の後継、新垣邦男氏=社民=の一騎打ちに。新垣氏は、照屋氏の強固な支持基盤を引き継ぎ、全国唯一の社民議席を守った。
自民は國場氏、宮崎氏ともに比例復活を果たしたが、立憲民主の屋良氏と金城氏はともに落選し、保革で明暗が分かれた。
「オール沖縄」勢力は前々回の衆院選で、すべての選挙区を独占していたが、当時の勢いはない。玉城知事は「辺野古新基地反対でブレることはない」と強気の姿勢を保つが、求心力の低下は明らかだ。
実際、玉城知事を支えていた保守系政治家や有力企業が次々と離脱。「オール沖縄」が事実上、共産党主導になっていることへの警戒感が高まっている。19年補選では屋良氏の選対事務総長を務めていた赤嶺昇県議会議長も「オール沖縄」と手を切り、自民候補を全面的に応援した。
沖縄では来年、1月の名護市長選を皮切りに参院選や知事選が控える。いずれも辺野古移設が争点となることが予想される。今回の衆院選の結果を受け島尻氏は、辺野古移設が明確な民意となって現れたことを強調した。
= メ モ =
沖 縄 の 選 挙 結 果
「当」は当選。「比」は比例復活当選。
▼沖縄1区
当 赤 嶺 政 賢 共 産 前 61,596
比 国 場 幸之助 自 民 前 54,455
下 地 幹 郎 無所属 前 29,827▼沖縄2区
当 新 垣 邦 男 社 民 新 74,665
比 宮 崎 政 久 自 民 前 64,542
山 川 泰 博 維 新 新 15,296
中 村 幸 也 N 裁 新 3,053▼沖縄3区
当 島 尻 安伊子 自 民 新 87,710
屋 良 朝 博 立 民 前 80,496▼沖縄4区
当 西 銘 恒三郎 自 民 前 87,671
金 城 徹 立 民 新 72,031