【社説】東アサミット 「対中包囲網」への理解得よ
東南アジア諸国連合(ASEAN)各国と日米中などが参加する東アジアサミットが、このほどオンラインで行われた。
5年ぶりに米大統領参加
米国からはバイデン大統領が出席。トランプ前大統領は就任した2017年から4年連続で欠席しており、米大統領の参加は5年ぶりとなった。
バイデン氏は米国とASEANの「戦略的パートナーシップ」の重要性を強調。「ASEANはインド太平洋の地域構造に不可欠」と述べ、新型コロナウイルスや気候変動の対策に充てる総額1億200万㌦(約116億円)の支援を表明した。
また、南シナ海や台湾海峡などでの中国の軍事的な動きを非難。台湾問題をめぐっては、米国として深く関与する考えを示した上で「(台湾海峡での)中国の威圧的な行動に深い懸念を抱いている」と述べ、中国を強く牽制(けんせい)した。
中国による南シナ海の軍事拠点化は「国際的なルールに沿った秩序への脅威だ」と批判し、航行の自由の重要性を強調した。米国のASEANへの関与強化は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に不可欠だ。
サミットの議長声明は、中国を念頭に「土地の埋め立てや深刻な出来事に対し、一部首脳が懸念を表明した」と指摘。昨年の「深刻な懸念」という表現よりも後退した。
東アサミットを含むASEANの一連の首脳会議では、日米、オーストラリア、インド4カ国の連携枠組み(クアッド)や、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を柱とする「対中包囲網」形成に対し、一部のASEAN加盟国から不測の事態に巻き込まれることを危惧する意見が相次いだ。こうした事情が議長声明の表現に反映したと言えよう。
バイデン氏は南シナ海問題などで「民主主義や人権、法の支配、航行の自由を支持する同盟国や友好国と引き続き協力する」と述べている。クアッドやオーカスについてASEAN諸国の理解を得ていく必要がある。
一方、中国は環太平洋連携協定(TPP)加入に向け、ASEANへの働き掛けを強めている。李克強首相はASEANとの首脳会議で「中国は加入申請した。ASEANの支持を望む」と明言。「南シナ海の平和は中国とASEANの共同利益。(紛争防止に向けた)『行動規範』を早期に妥結させ、南シナ海を平和の海にしたい」と歩み寄りの姿勢を見せた。
だが、知的財産権の保護、国有企業の優遇制限、政府調達の透明性確保など、TPP協定が定める厳格なルールを中国が順守できるか疑問だ。TPP加盟国であるベトナムやシンガポールなどのASEAN各国は厳格に対応すべきだ。
岸田政権は連携強化を
東アサミット初参加の岸田文雄首相は台湾海峡の平和と安定の重要性を訴えるとともに、香港や中国新疆ウイグル自治区の人権問題などに言及した。
サミットの開催は衆院選前だが、衆院選で岸田政権は有権者の信任を得た。地域の安定と繁栄のため、同盟国の米国と歩調を合わせてASEANとの連携をさらに強める必要がある。