【上昇気流】企画展「収蔵品展 市川を愛したゆかりの作家10人の品々」
千葉県市川市の市川市文学ミュージアムで、企画展「収蔵品展 市川を愛したゆかりの作家10人の品々」が開かれていて、見に行った。改めて知ったのは、多くの作家たちが活躍してきた文学的土壌があったこと。
ここを終焉(しゅうえん)の地とした永井荷風、戦後映画の黄金期を支えた脚本家の水木洋子、直木賞作家の井上ひさし、詩人の北原白秋や宗左近、歌人の吉井勇、俳人の能村登四郎など、バラエティーに富む顔触れ。
自慢のコレクションは、近藤邦男氏から寄贈された資料を中心とした「永井荷風コレクション」と、関連研究書、論文、雑誌などを集めた「永井荷風研究資料」で、目録ができている。
荷風は1946年、市川市に移り住み、終焉の地とした。「門松林深きありたり閑静頗(すこぶる)愛すべき処(ところ)あり、世を離れて隠住(かくれす)むには適(てき)せし地なるが如し」(『断腸亭日乗』)と記す。緑が多く、川もあって、心を和ませたようだ。
小さなミュージアムショップで「第二十一回市川手児奈文学賞 2020年市川を詠む」という作品集を見つけた。手児奈は万葉集に詠まれた地元の女性で、その伝説にちなんだ短詩系文学賞。
全国39の都道府県から5000点を超える応募作品が寄せられたという。全国に定着した賞だ。短歌の大賞は清浦夜鶴さんの「錆きつた行徳可動堰のごと両腕いつぱい秋を抱ききる」。可動堰の時代的変化を歌っている。ページをめくると、新たな美の発見があって興味を引いた。