沖縄振興予算、10年間3000億円維持を要請
岸田文雄政権が誕生し、沖縄担当相に地元、沖縄選出の西銘恒三郎衆院議員が就任した。玉城デニー知事は8日と9日、西銘氏と面談し、沖縄振興について話し合い、来年3月に期限を迎える沖縄振興特別措置法の10年継続を推進する意向を示した。(沖縄支局・豊田 剛)
玉城知事が西銘沖縄相と連日会談、特措法の継続で一致
9日、県庁で西銘氏を迎えた玉城知事は開口一番、「沖縄選出の議員として大臣に就任したことを、大変心強く感じている。いち早い来県を心から歓迎する」と述べた。
西銘氏は沖縄4区(沖縄本島南部、離島地域)選出で自民党内で、沖縄振興を話し合う「沖縄振興調査会」の幹事長を務め、2022年度からの沖縄振興についての提言取りまとめに関わった。
9日の会談に先立ち、玉城知事は8日上京し、西銘氏の大臣室を訪れた。「沖縄出身の方が沖縄・北方、復興に責任を持っていただくことを非常にわれわれからしても光栄に思う」と賛辞を贈った。
9日の会談では、玉城知事は西銘氏に、沖縄振興予算3000億円台を10年間維持するよう要請した。来年3月に期限を迎える沖縄振興特別措置法について、新たな沖縄振興特別措置法の期限を10年とすることも求めた。
安倍晋三政権は2013年12月、21年度まで沖縄振興3000億円台を確保すると仲井眞弘多知事(当時)と約束していた。これについて元県幹部は、「仲井眞氏は並々ならぬ決意で当時の安倍政権と交渉を重ねた。県の幹部が交渉に当たる際は、常に覚悟と緊張感を持って臨んだ」と振り返る。その上で、「今の県政にはそれを感じられない。県が国にどう貢献するのか示さずに、単に10年間の予算の確約を求めるのはあまりにも唐突で虫が良すぎる」と批判した。ある経済界重鎮も「政府との信頼関係を構築するのが先だ」と話した。
玉城知事は、一括交付金の増額、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設中断、軍用地の跡地利用の開発も要望した。
西銘氏は、辺野古移設問題など「所管外のこともある」とした上で、「沖縄振興を担当する大臣として、重く受け止めていきたい。とにかく現場に出向いて、話を聞きたい」と述べた。沖縄振興特別措置法については、新たな法的措置を衆院選後に整備して振興策を推進する意向を示した。
経済回復に全力、経済界は開発金融公庫の存続求める
その後の経済団体との懇談には、県商工会議所連合会、沖縄経済同友会、沖縄県経営者協会、沖縄県農業協同組合中央会、沖縄県建設産業団体連合会、沖縄観光コンベンションビューロー(OCBV)などの主な経済団体の代表が出席した。会議は非公開で行われ、内閣府の基本方向で日本政策金融公庫との統合が検討されている沖縄振興開発金融公庫の存続や沖縄経済の回復などについて話し合われた。
県商工会議所連合会の石嶺伝一郎会長は「沖縄の経済振興のためには、沖縄振興開発金融公庫の存続は必須という要請があったことに対し、希望を『120%以上で受け止める』と前向きな姿勢を示した」と明らかにした。また、コロナ禍で疲弊する企業への雇用調整助成金や、離島の農水産物の流通コストに対する支援の要請もあった。観光業界からは国際線の再開や、国際会議の県内開催を求める意見も出た。
会談後、西銘氏は「沖縄の経済はコロナ禍で大変傷んでいる。普段は『ひめゆりの塔』(糸満市)周辺のお土産品店は修学旅行客などでにぎわっているが、ずっと閉まった状態だ」と述べ、地元経済の回復に取り組む考えを示した。
西銘氏は10日、自身の選挙区である沖縄本島南部で大臣就任のお礼を兼ねた演説を行い、「コロナ禍で落ち込んでいる経済を立て直すことが課題。できるだけ現場に出向き、人々の声を聞いて、全力で問題解決する」と決意を述べた。
沖縄出身で沖縄振興に携わる人物の沖縄相就任は、保革を超えて歓迎されているが、西銘氏の地元4区は事情が違う。10月31日に投開票を迎える衆院選では、玉城知事は西銘氏の対抗馬で革新勢力が推す元那覇市議の金城徹氏を応援する立場だ。金城氏陣営の幹部は、「沖縄振興のために知事が西銘氏に頭を下げ、表立っての批判は避けるだろうから、やりにくくなった」とため息をついた。
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沖縄振興開発金融公庫
沖縄振興開発金融公庫法に基づく、内閣府・財務省所管の特殊法人・政策金融機関。2018年現在、日本に現存する唯一の特殊法人である金融機関。日本政策金融公庫、住宅金融支援機構及び福祉医療機構(社会福祉貸付を除く)の3機関に相当する業務に加え、沖縄の地域的な政策課題に応える独自制度、地域開発や事業再生を支援する出資及びベンチャー出資を扱う。












