玉城デニー知事就任3年、公約達成率は1.7%
沖縄県の玉城デニー知事は10月4日、就任から満3年を迎えた。これまで、首里城火災や豚熱(CSF)、新型コロナウイルス対応など困難な課題に直面。達成した公約は291のうち五つと苦戦している。1年以内に知事選を控えるが求心力の低下が顕著で、再選に向けての明言は避けている。(沖縄支局・豊田 剛)
達成した公約は291のうち5、求心力の低下が顕著に
玉城知事は、公約として掲げてきた291の政策のうち「達成」が5、「推進中」が280、取り組みに向けた検討段階となる「着手」が6、具体的な取り組みに至っていない「検討中」はゼロと説明した。
「誰一人取り残さない社会の構築を目標に公約以外にも取り組んできた」と述べたが、達成率にするとわずか1・7%だ。達成した5政策のうち、那覇空港第2滑走路の整備は仲井眞県政の時代に予算を確保し、整備が進められてきたもの。やんばる・西表島の世界自然遺産登録は前県政から取り組んできた。
また、カジノ反対を公約達成項目に含めたことについて、県政野党関係者は「これを公約と言うことから玉城県政の苦しさが伝わる」と指摘した上で、「そうであれば、辺野古に基地を造らせていることは公約違反の項目に付け加えるべきだ」と揶揄した。
残る任期1年で基地建設阻止は可能だろうか。
「県知事選挙でも、辺野古に新基地(代替施設)は造らせないという公約を掲げて、県民から意思の負託を受けている。新基地建設に反対する民意も県民投票などで明確に示されている。引き続き、政府に対話によって解決策を求める姿勢を粘り強く求めたい」
玉城知事は、こう述べたものの、辺野古移設関連の裁判ではすべて敗訴している。4日に発足した岸田新政権は普天間飛行場の危険性除去のためには、辺野古への早期移転しかないという従来の政府方針は変えていない。
次期知事選への立候補に関しては「現段階ではまだ答えられない。残る任期に全力を尽くす」と述べるにとどめた。自己採点について聞かれると、「自分で評価するのは難しく自己採点は控えたい」とし、「県民に高い評価が得られるよう全身全霊で施策実現に取り組みたい」と述べた。
1年前の知事就任2年の記者会見では、「自分自身は常に0点と思っているが何も仕事をしていないということになるので折り返しの50点」と自己採点していた。
玉城知事の最大の課題は求心力が低下していることだ。経済界からの主要な支援者である金秀グループの呉屋守将氏が後援会長を辞任し、来る衆院選では共産の赤嶺政賢議員ではなく自民の國場幸之助議員を支援すると表明した。与党の一翼を担っていた「会派おきなわ」は空中分解し、議長を務める赤嶺昇県議は野党の立場に転向した。
オール沖縄弱体化「私の力不足」、野党に配慮する姿勢も
記者たちは相次いで「オール沖縄」の弱体化を指摘した。こうした指摘について、玉城知事は「私の力の足りないところは日々、私が自分自身で痛感している」とした上で、「だからこそ、一つ一つの物事には、愚直に取り組んでいく姿勢が大事だと繰り返し自問自答している」と苦しい胸の内を話した。
ここ最近の選挙では、「オール沖縄」を前面に出す政党は共産しかないことから、「オール沖縄」から共産を想起する県民が多い。
オール沖縄の現状認識については、(保守か革新かという)「イデオロギーではなく、ウチナーンチュが求めているものは何かというアイデンティティーでつながっている。これは、翁長雄志(前)知事が残してくれた言葉」。こう述べた上で、与野党が同数になった県議会への対応について「片側にずっと軸足を置き続けて県政運営を続けることは不可能だ。与野党を超え政策提言を受け止め県政に反映したい」と述べ、野党へ配慮する姿勢も示した。
来年4月に新たな沖縄振興計画が始まる。同5月には、沖縄の施政権が日本に返還されて50年となる。沖縄県が主体的に振興策や将来の制度設計に取り組む重要な節目となる。このまま辺野古移設問題で政府と対立姿勢を続けていいのか。玉城知事の覚悟が問われる4年目となる。