「日本の領土」国内外に示す尖閣行政標柱が完成
わが国固有の領土である尖閣諸島が、沖縄県石垣市(中山義隆市長)の行政区域であることを国内外に示そうと、石垣市が島名などを刻んだ新たな標柱を製作し、8月23日公開した。今後、尖閣5島への設置に向け、国に対し上陸申請を行うが、政府は上陸に難色を示している。(沖縄支局・豊田 剛)
厳しさ増す安全保障、石垣市が国に上陸申請も許可困難
中国海警局の公船が28日と29日、2日連続で尖閣諸島の領海に侵入、領海内の日本漁船に接近を試みた。尖閣諸島沖での中国公船の領海侵入は8月31日現在で28件目、日数にして35日。昨年の24件、29日を既に上回っており、安全保障環境は厳しさを増している。
「尖閣周辺に中国公船が連日出没し、大変厳しい状況が続いている。尖閣について国民に広く正しく知ってもらうことが大切だ」
石垣市の中山市長は23日の記者会見でこう語った。
標柱は高さ108㌢、幅30㌢。石垣島産の御影(みかげ)石で造られ、表に「八重山尖閣諸島 魚釣島」などの島名が、裏側に「沖縄県石垣市字登野城尖閣二三九二番地」などの地名が刻まれている。標柱と説明板は、石垣出身の書家、茅原南龍氏が揮毫(きごう)した。
石垣市は昨年10月、尖閣諸島の字名を「石垣市字登野城」から「石垣市字登野城尖閣」に変更した。標柱製作は行政手続きの一環で、日本領土であることを明確にする狙いもある。中山市長は、上陸申請して許可されれば自ら上陸し、魚釣島、南小島、北小島、久場島、大正島の各島に設置する考えを示した。
ただ、政府は慎重だ。加藤勝信官房長官は、「政府は尖閣諸島および周辺海域の安定的な維持管理という目的のため、原則として政府関係者をのぞき、何人も上陸を認めない」と述べ、これまでの政府方針を踏襲する考えを示しており、上陸は困難という見方が有力だ。
尖閣情報発信センターを設置へ、標柱や資料などを展示
このまま手をこまねいているわけにはいかない。
中山市長は同日の会見で、尖閣諸島情報発信センター(仮称)を年末年始をめどに石垣港離島ターミナル2階にオープンし、しばらくの間、そこに標柱を展示する考えを明らかにした。
市は尖閣諸島資料館を建設するよう国に要望しているが、計画は具体化していない。それまでの間、情報発信センターで尖閣諸島に関する資料などを展示することになる。標柱のほか、市が製作した尖閣諸島の立体模型、さらに、尖閣諸島と日本人の歴史的な関わりなどを紹介するパネル展示も検討されている。
石垣市は同センターを通じ、尖閣諸島が日本の領土であり、市の行政区域であることを国内外に広く発信する計画だ。
仲間均・石垣市議「尖閣の現実を知って中国に圧力を」
漁のライブ中継を企画、尖閣の魚のブランド化も検討
7月中旬と8月下旬、尖閣諸島に漁に出掛けた際、中国公船は近づく素振りはしたものの遠巻きにしているだけだった。それ以前は漁を妨害するように近寄ってくることもあった。映像を記録し、メディアを通じてそれを流すことで一種の抑止となっているのではないか。それ以上に、尖閣諸島で何が起きているのか国民に知らしめることが大切で、それが中国に対して圧力をかけることになる。
今後、尖閣諸島で漁をするたびにライブ中継したい。その機材をそろえ環境を整えるためにクラウドファンディング(資金造成)を行ったが、反響が大きく、あっという間に目標額を超える金額が集まった。漁に行き続けることが領海を守ることにつながると思っている。
もう一つ、尖閣諸島の魚をブランド化することを考えている。今、石垣の魚も尖閣諸島の魚も一緒くたで同じ値段が付けられている。しかし、潮流が激しい尖閣諸島で捕れる魚は身が引き締まっていておいしい。特にアカマチ(ハマダイ)は最高級魚だ。
尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海での中国の禁漁期間が8月16日に明けた。何十隻もの中国漁船が排他的経済水域のすぐ外側で漁をしている。
本来、敵に対しては攻撃するしかないのだが、なぜそれができないのか。中国公船が押し寄せてきた時にどう対応するか、今問われている。どのように国を守るのか、権力によって打って出ることができるように、法改正が必要となってくる。(談)