防災の日 地域ごとに細心の災害対策を
今年も豪雨による川の氾濫や浸水で多くの犠牲者が全国各地に出ている。しかし異常気象の影響などもあって、どこで災害が発生し被害を受けるか、その予測すら難しいのが現状だ。国がリードし、自治体ごとに特色を持たせた細心の防災対策を立てるべきだ。
自治体独自の雨量計を
山間の過疎地や山沿いの開発地域での土石流被害、川筋に沿った住宅密集地での浸水被害などが目立つのは、今日、国土開発に十分な目配りができなくなっているせいだ。社会構造的な背景としては、全国的に過疎化や少子高齢化が進み、一人暮らし世帯が増加したことで「自助、共助」が容易でなくなったことが挙げられる。
それに対し、政府は5月に修正された防災基本計画でも「近年の都市化、高齢化、国際化、情報化等の社会・経済構造の変化に十分配慮して、常に的確かつ適切な対応が図られるよう努めること」とし、防災を中心として国土強靭(きょうじん)化を図ろうとしている。社会構造の変化を把握し、俯瞰(ふかん)的に国土開発に努めながら、地域の橋梁(きょうりょう)などのインフラ整備についても指導していかなければならない。
地域の避難体制確立も重要課題の一つ。自治体が地域の弱点箇所を調査し、独自に雨量計を設置して観測・監視体制をつくれるよう要請し、必要であれば国がバックアップすべきだ。
ここ数年、全国各地を襲った豪雨は短時間に強く降ることが特徴。気象庁の観測網アメダスの降水量観測所は現在、全国に約1300カ所(約17㌔間隔)あるが、地域を網羅することはできない。中央の観測データの空白部分を埋める必要がある。
近年頻発し、時に数十人の犠牲者を出すような土砂災害は、洪水などと違ってごく局地的に発生する。また数百㍍以上の山地があると、線状降水帯が山の上の方で発生し降雨が崖崩れや土石流を引き起こすが、大半の雨量計は平地にあるので、アメダスだけではカバーできない。災害の発生が予想される地点の周辺に雨量計がなければ意味がないのである。
一方、東京、大阪など大都市自治体の対策も急務だ。都市型豪雨は、1時間に50㍉を超える大雨が短時間に集中して降る。今夏も東京の各地で局地的に次から次へと場所を変え、雷を伴って激しく降った。
東京都は地域ごとにハザードマップを各戸に配布しているが、災害のシナリオ別の避難経路や複合災害への対応についてはほとんど記されていない。地震と豪雨が重なって起こった場合、これまでに見たことのないような極めて複雑な災害の様相を帯びることが予想される。これについての情報はなく、大都市の自治体にとって大きな研究課題となっている。
風土に合った津波対策を
豪雨だけでなく、津波への対策も必須だ。その恐れがあるのは三陸沿岸だけとは限らない。江戸時代のように太平洋沿岸の各地を襲う津波が周期的に繰り返されるという予測は今日もなされている。わが国の2000年以上の歴史における経験を生かし、その風土に合わせた対策を行う必要がある。