沖縄県の新型コロナ感染率は全国でワースト
低年齢層の感染拡大が深刻、新規感染の8割がデルタ株
沖縄県で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている。ワクチン接種が進む高齢者の感染は減少傾向にある一方で、若者の感染率が急速に高まっている。新規感染者数のうち8割超がデルタ株(インド型変異株)になっており、若い世代のワクチン接種の遅れも懸念材料の一つだ。(沖縄支局・豊田 剛)
医療崩壊が現実に、「セルフロックダウンのつもりで」
沖縄県の直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数は9日現在247人で、195人の東京を上回り全国ワースト。全国平均の3倍以上で推移する。前週の同じ曜日の感染者を超えるのは9日で28日連続を記録した。県当局は「感染者はさらに増える」と危機感を示している。
その影響で沖縄本島内の医療体制は逼迫(ひっぱく)している。県のコロナ対策本部によると、8日時点で受け入れ可能な新型コロナ重点医療機関の440床のほぼすべてが埋まっている。
沖縄県内の自宅療養者は9日現在2090人で、過去最多になった。国の基準で入院対象に位置付けられる「中等症Ⅰ」の感染患者は、入院できない状態になっている。
さらに今週は、呼吸不全で酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」の患者も、入院できなくなるケースが増えるとの予想だ。
政府は2日、入院の対象を「重症者と特に重症化リスクが高い人に限る」という方針を打ち出して批判を浴び、数日後に「中等症は原則入院」と修正した。ところが、沖縄では中等症でも入院できないケースが増えており、在宅で酸素投与している患者は8日時点で4人いる。
うるま市の医療機関では深刻なクラスターが発生している。7月19日に最初の感染者が見つかると、なし崩し的に感染が拡大。入院患者270人の約6割に当たる166人が感染し、そのうち23人が死亡した。職員は114人のうち20人が感染した。
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからないことで、玉城デニー知事は1日、市町村代表者、医療界、経済界と合同で緊急メッセージを発表した。「沖縄県内で確認される感染者数の人口比は全国ワーストで、海外諸国ではロックダウン相当のレベル。医療崩壊が現実のものとなりつつある」とした上で、県民に2週間の外出自粛や他都道府県・離島との往来自粛、積極的なワクチン接種を要請。玉城知事は「セルフロックダウンのつもりで行動を抑制してほしい」と呼び掛けた。
とりわけ若い世代での感染拡大は深刻だ。直近1週間の感染者は40代以下が大半を占める。県の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(座長=藤田次郎琉球大学大学院教授)では、「20~30代の接種割合が低いとの話が市町村からある」という指摘が出た。7月26日~8月1日の1週間に確認された感染者2461人のうち、児童・生徒・学生を含む職業別で最も多かったのは小学生で143人、次いで建設業(140人)だった。夏休み期間、外で活発に行動する小学生ら低年齢層にステイホームの呼び掛けが届いていないことが浮き彫りになっている。
こうした中、琉球大学は12日から教職員や他校を含む大学生を対象にした職域接種を始めるが、6日時点で予定の3割程度しか学生が集まっていないという。
不十分な水際対策、玉城知事の県民への要請も効果に疑問
玉城デニー知事は4日の会見で、「見知った顔や友人でも、同居家族以外の会食は感染リスクが高いのでやめて」と強く訴えた。
8月の1週目と2週目の土日祝日には大型店舗の休業を要請している。ところが、「県外には沖縄の呼び掛けは届いているのだろうか」。ある医療関係者は、感染経路が不明な感染者が増えている背景には県外からの無防備な持ち込み例があると指摘する。
ビッグデータを提供する「Agoop(アグープ)」のデータよると、8月7日土曜日の夜間の人出は、那覇市内の調査地点4カ所のうち3カ所で前週(7月31日)より増加した。特に那覇空港駅は80・1%も増えていた。
経済団体のある幹部は「水際対策が不十分なのに、県民への要請にどれだけ効果があるのか」と疑問を呈する。その上で、「海外のような思い切ったロックダウンを短期集中的に行わなければ、感染者は高止まりで一向に減らないのではないか」と指摘した。
知事らによる緊急メッセージには反発もある。県ホテル協会の平良(たいら)朝敬(ちょうけい)会長は、「具体策や補償がなく唐突だ」とし、県議会を通じてメッセージ撤回を要請した。5月23日に発令された県の緊急事態宣言は早くて8月31日まで続く。県は、「自粛疲れ」や「自粛慣れ」への対策も怠ってはならない。