オール沖縄が衰退、革新市政に“NO”を示す
任期満了に伴う那覇市議選(定数40)が11日投開票され、革新系の城間幹子市長を支える与党が議席を減らした。一方で、自公と保守系野党で過半数を確保し、年内に行われる総選挙、さらに、来年秋にも予定される市長選と県知事選に向けて弾みがついた。(沖縄支局・豊田 剛)
那覇市議選で与党が議席減、自公、中道保守で過半数に
革新政党・団体で構成する「オール沖縄」の城間幹子市長を支持する与党系は改選前から1人減らして14人に。そのうち、共産は2人減の5人、翁長雄志前知事が提唱した「オール沖縄」に同調した元保守系会派「にぬふぁぶし」は2人から1人に減った。
一方、自民・公明の野党系は5人増の19人が当選した。自民の公認・推薦は前回7人から5人増え12人。野党系無所属を含めれば過半数に達する。
投票率は46・40%で前回選挙を4・8ポイントも下回ったが、自民は前回より約700票増やした。一方で、公明と共産はそれぞれ約3000票減らしたが、議席を維持した公明と2議席失った共産で明暗が分かれた。自民は今回の市議選を沖縄の政局を占う重要な選挙と位置付け、早い時期に候補者を公募。将来性豊かで、かつ、ある程度の基盤のある候補を擁立できた。
玉城デニー県政と歩調を合わせる城間市政にとっては厳しい結果を突き付けられた。城間市政を支える与党は、潰(つぶ)し合いを恐れて候補者を絞った結果、立候補者は過半数に届かない19人にとどまった。それにもかかわらず、現職3人を落とす最悪の結果になった。
新型コロナウイルスの感染対策やワクチン接種で他市町村に後れを取っていることも影響した。また、市の公有地を無償提供した孔子廟をめぐる訴訟が最高裁で敗訴したことがイメージダウンにつながったことも否定できない。
選挙期間中、与党で「オール沖縄」というフレーズを使ったのは共産だけ。城間市長が応援に入った候補は限定的だった。ある革新系候補は、「オール沖縄は有名無実になりつつあり、逆風にすら感じた」と嘆いた。
自民県連のある幹部は、「有権者には『オール沖縄=共産党』のイメージが強い。そもそもオール沖縄体制など存在しないことがはっきりした」と分析した。
衆院選に弾みも保守内にしこり、自民県連幹部は慎重姿勢
市議選は、秋にも行われる衆院選の代理戦争の様相も呈した。
那覇市が有権者の95%を占める沖縄1区は、2回連続で共産候補が選挙区当選している全国で唯一の選挙区だ。自民公認の国場幸之助衆院議員と元維新の下地幹郎衆院議員による保守分裂で、赤嶺政賢衆院議員が漁夫の利を得た形だ。
今回の市議選の当選者別で見ると、国場氏支持は自公と保守系無所属で22人、赤嶺氏は12人、下地氏は3人。自民復党を目指す下地氏に同調する候補は5人いたが、3人の当選にとどまり、影響力を示すことができなかった。
自民の県連幹部は、「復党を目指す下地氏が自民公認候補以外を支援したのは信義に反する」と批判。その上で「総選挙では必ず基地問題が争点となる。市議選とは別に考えるべきだ」と慎重な姿勢を示している。
商店街の看板娘が市政に新風を吹き込む
20代で初当選の外間有里さん、地域の声を届ける
今回は女性候補者が14人おり、そのうち、改選前の9人を上回る13人が当選。改選前はいなかった20代も3人当選するなど、市議会に新風を吹き込んだ。「20代」「女性」のいずれにも該当する唯一の候補者は、自民新人の外間有里さん(29)。新人の中で最も多い得票を得て、選挙翌日に沖縄2紙の1面トップを飾り、新市議の“顔”になった。
那覇市最大の商店街、市場本通り沿いで伝統菓子を販売する外間製菓所の3代目。3姉妹の長女だ。琉球大学を卒業して就職。その後、東京の大学院に進み、地方創生について研究した。地元に帰ると、2019年、父から家業を引き継いだ。
コロナ禍で観光客が激減している商店街を回り、店主らから話を聞く中で、「地域や商店街の声を届ける人が必要だ」と出馬を決意。外間さんは「まちぐゎー(商店街)を守る」のキャッチコピーで市民の心をつかみ、自民公認の中では2番目の得票だった。18年に那覇市観光キャンペーンレディーに選ばれ、商店街をPRした経験は財産になっている。
当選を受け、「(議会では)商売をする人、女性、若者の声を届け、那覇のまちづくりに関わりたい」と意気込みを語った。
主要政党別議席数(推薦含む)
< 与 党 > < 野 党 >
共 産 5 自 民 10
立 憲 民 主 3 公 明 7
社 民 2
社 会 大 衆 2