英の規制解除、コロナと共生する予防習慣を


 英国イングランドで新型コロナウイルス感染対策の法的規制がほぼ全面的に解除されたことは、予想される爆発的な感染拡大や新たな変異株の発生が懸念される一方で、ワクチン接種完了者が人口の半分以上に達したことから入院、死者数を低く抑え込んでおり、コロナ後社会の行方を占う上で注目される。

画期的な「自由の日」

 ジョンソン首相が「コロナと共生する新しい方法を見つけるべきだ」と表明して、16カ月に及んだイングランドの都市封鎖を解除した19日の「自由の日」は、パンデミック(世界流行)の中で画期的な出来事であることは確かだ。

 繁華街が活気を取り戻し、ライブハウスで若者たちが踊り明かす光景は、人々が切望したコロナ以前の日常に近い。ワクチン接種の普及によってコロナが一般的な感染症に収束していくことを展望し、集団免疫の獲得を視野に置く措置に、危険な賭けであり実証実験だとの厳しい指摘も出ている。

 英国では4月から既に段階的な規制解除が進み、接種2回完了を示すワクチンパスポートも導入された。6月から7月にかけて開催されたサッカー欧州選手権の試合会場の一つとなった9万人収容のウェンブリー・スタジアムには6万人以上の観客を入れるなど、人の集まりと移動も増えていた。

 1日当たりの感染者数は1月に6万人を超えたが、5月には2000人程度に減じていた。だが6月から再び急増し、規制解除は5万人前後の感染拡大の中で行われる異例の措置となった。しかし、1日当たりの死亡者数は1月に1700人を超えたが、3月以降数十人に、入院者数は1月に4万人近くにまで達したが、7月には3000人ほどに抑えられている。

 この実績は昨年12月から米ファイザー・独ビオンテック社製ワクチン接種を開始し、自国でもオックスフォード大学・アストラゼネカ社製ワクチンを開発して今年1月から接種を始めたワクチン政策の成果だ。

 今後、1日の感染者数が10万~20万人に増大すると予想される中、英政府が規制解除を決定したのは、感染拡大しても入院や死亡に至る重症化が抑えられていることに着目したものだ。

 一方で接種のさらなる普及を要するとする時期尚早論や、感染者数の急増によって新たな変異株が発生する可能性への懸念からの批判も絶えない。

 コロナ用ワクチンを海外に依存するわが国は、高齢者から始まる一般向け接種も5月に入ってからだ。しかも、調達量が不足して失速するなど成果を確認できないまま東京五輪の開幕時期を迎え、ほとんどの会場を無観客とする結果になった。

 こうした感染症有事への対応能力の欠如は克服しなければならないだろう。

今後も用心深い対策を

 夏の長期休暇に入る時期の経済活動に配慮したジョンソン氏の法的規制解除決定は、感染対策を個人や民間の責任とした面もある。

 まだ、コロナ以前の日常を取り戻すことはできていない。用心深い予防対策を習慣とすることがコロナとの共生だ。