次期沖縄振興計画、素案作成が月末にずれ込み

 沖縄県は、2021年度末に期限を迎える沖縄振興特別措置法(以下、特措法)の延長や次期沖縄振興計画の策定に向けて素案をまとめている。が、ゴールデンウイーク明けの目標が月末にずれ込む見通しだ。政府・与党が振興計画の単純延長はないという立場を取る中、県がどのように交渉力を発揮するかが問われている。(沖縄支局・豊田 剛)


2021年度末に期限を迎える特措法、問われる県の交渉力

 現在の特措法は、令和4年3月末に期限を迎える。2013年12月、当時の仲井真弘多(ひろかず)知事が政府と約束した約3千億円規模の一括交付金も年度末で終わる。特措法は、沖縄振興計画に基づく事業を推進するに当たり、高率補助制度、沖縄振興交付金制度、沖縄関係税制・政策金融などの特別措置の根拠となる法律だ。

 沖縄振興計画は、沖縄が日本復帰した1972年以降、10年ごとに策定されてきた。当初は沖縄振興開発計画という名称で戦後、米軍統治下にあって復興が遅れた沖縄と本土との格差是正が目的だった。それから5次にわたって実施された。

 振興計画策定の主体が国から県に移ったのは民主党政権の時だ。仲井真氏は、「一括交付金の制度ができ、行政の縦割りを排除して県の要望を大いに受け入れてもらえるようになった点においては、評価できる」と話す。

 「仲井真知事は国と常に厳しい交渉をした。県は周到に提案を用意し、一切の妥協はなかった」。仲井真県政時代の元幹部は、当時の交渉をこう振り返る。

 今の県政には謝花喜一郎副知事以外に、振興計画策定の交渉を知る人物はいない。ただ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設建設をめぐり、政府と対立し、複数の裁判を行うなど、基地問題で政府と対立しているだけに、十分な交渉力を発揮できるか未知数だ。副知事として県経済・振興計画を担当し、沖縄国際大学でも沖縄振興を研究してきた富川盛武氏が3月で退任したことも不安材料となっている。

政府与党「単純延長なし」、玉城知事は関係者に要請へ

次期沖縄振興計画、素案作成が月末にずれ込み

次期沖縄振興計画について説明する玉城デニー知事=14日、沖縄県庁(豊田剛撮影)

 こうした中、内閣府沖縄振興局の原宏彰局長が4月12日、次期計画について政府の立場は「白紙」と述べた。さらに、同月14日に行われた自民党の沖縄振興調査会で小渕優子会長は「単純延長はあり得ない」と発言。河野太郎沖縄担当相も同様のスタンスを取っている。

 「あらゆる機会を通じて、国、関係者、関係要路の方々にしっかりと説明し、制度実現に向けての理解と尽力を賜りたいとお願いしてきたい」

 こう話す玉城知事だが、動きの遅さに経済界や地元メディアから批判が集まる。4月16日、沖縄振興に関して政府・与党に上京して要請を行う予定だったが、沖縄県に新型コロナウイルス感染症のまん延防止等重点措置が適用されているため、上京を見送り、関係省庁と電話でやりとりした。その内容については明らかにされていない。

 18、19の両日には感染症対策を徹底した上で政府や与党関係者と面会し、①新たな沖縄振興特別措置法の制定②一括交付金制度の延長③駐留軍用地跡地利用促進法――などを求める予定だ。

いまひとつの骨子案、SDGs強調も具体策は乏しく

次期沖縄振興計画、素案作成が月末にずれ込み

沖縄県が1月下旬に公表した新たな振興計画骨子案(豊田剛撮影)

 県は1月29日、次期沖縄振興計画の骨子案を発表したが、県庁OBや経済界での評判はいまひとつだ。

 骨子案は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れ、「誰一人取り残さない社会」「安全・安心の島」を目指すとしている。SDGsは玉城知事が常日頃口にするなど、現県政の特色ともいえる。だが、概念が漠然としており、沖縄の振興発展との関係が分かりにくい。

 骨子案を基に作成した「新たな沖縄振興のための制度提言」では、沖縄振興交付金制度の継続や県産酒類に対する酒税や揮発油税の軽減措置、民間活力を活用したSGDs推進など、65項目を挙げた。

 経済界からは子供の貧困、離島振興、介護・福祉人材の担い手不足といった問題にもっと踏み込むよう要望が出ている。また、県庁OBは「これといった目玉がない」と苦言を呈する。

 連休明けにも骨子案と制度提言を基に振興計画の素案が発表される予定だったが、発表は月末にずれ込む見通しだ。これについて玉城知事は14日の記者会見で「前回よりも丁寧にやらなければならないし、来年度の(単年度)予算も別に組み立てなければならない」とし、「特に遅れはないと思っている」と強調した。