尖閣諸島の領有権、国際周知を図るべき
沖縄県選出の国場幸之助・衆院議員に聞く
菅義偉首相は15日から訪米し、16日に世界の首脳の中で初めてバイデン大統領と会談する。中国が日本の施政を損なおうとする一方的な行動を継続する尖閣諸島(沖縄県石垣市)、台湾海峡の情勢、日米同盟などについて、沖縄県選出の国場幸之助衆議院議員に聞いた。(聞き手・豊田 剛)
主権侵害行う中国海警局、大局的観点から戦略的な対策を
――尖閣諸島沖には連日、中国海警局の公船が排他的経済水域や領海内に侵入し、緊張状態にある。
尖閣諸島は我が国固有の領土であり、尖閣諸島をめぐり解決しなければならない領土問題はそもそも存在しない。
中国は、1992年には全国人民代表大会常務委員会で「領海及び接続水域法」を制定し、尖閣諸島を中国領土とする根拠の無い独自の主張を明確にした。また、中国海警局が編入されている人民武装警察が中央軍事委員会の指揮系統にあることを、2020年の人民武装警察法改正で明記した。中国海警船舶は、昨年は333日間接続水域に入った。中国は新たに海警法を施行したが、海警法に基づこうと、他の中国のいかなる国内法に基づこうと、尖閣諸島周辺の我が国領海内で独自の主張をするといった海警船舶の活動は、そもそも国際法違反であり、我が国の主権侵害行為であり、絶対に容認できない。
――日本は現状、海上保安庁が尖閣諸島を警備して対応している。
今は海上保安庁第11管区(那覇)が懸命に任務を果たしている。海保の能力では対応できない状況となれば自衛隊との連携になるが、隙のない緊密な連携を確保するべく不断の努力が必要であり、図上・実地双方の訓練とシミュレーションの徹底が不可欠だ。
また、尖閣諸島を国内法に明確にする観点から、沖縄振興特別措置法第3章の指定離島、有人島37、無人島17が指定されているが、その中に、尖閣諸島を政治主導で入れるべきだと主張している。
国際社会に尖閣諸島が明確に我が国の領土であり、現に有効に支配していることについて発信するとともに、日米安全保障条約第5条の対象ということにとどまらず、尖閣諸島に対する日本の有効な支配と領有権について、米政府から支持を得られるよう意思疎通を深めていくことが重要だ。実際、米政府は一貫して北方領土に対する日本の立場を支持している。
――尖閣諸島の所在地の石垣市や自民党国防議連などから、上陸許可を求める動きがある。
尖閣諸島を守るために何が最も有効なのか、大局的な観点から戦略的に考えなければならない。
日米同盟強化へ防衛力向上が必要、FOIP構想の発信も
――中国が台湾に軍事的圧力をかけている中、米国と日本の対応が注目される。
先月のアキリーノ太平洋艦隊司令官が米議会公聴会で、台湾有事の時期は大方の予想よりずっと近い旨発言したことは注目を集めた。
台湾は、日本にとって、基本的価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を持つ重要なパートナーであり、大切な友人だ。台湾をめぐる問題が両岸の当事者間の話し合いを通じ平和的に解決されることを期待しており、先日の日米2プラス2においても日米で台湾海峡の平和と安定の重要性について一致した。引き続き両岸関係の推移をしっかり注視していきたい。
また、現下の厳しい安全保障環境の中で、日本が自らの防衛力をより強固なものとし、日米同盟をさらに強化するために、その能力を向上させていくことは重要だ。
日米首脳会談では米国は日本の覚悟や決意、戦略を引き出したい狙いがあるだろう。日米首脳会談が、バイデン政権にとって最初の外国首脳との対面会談であることは、日米関係重視の姿勢だ。世界秩序の中で日本も主要なプレイヤーとして責任を果たしてほしいという思いを感じる。
――東アジアの安全保障環境で中国軍の東シナ海と南シナ海でのプレゼンス、「一帯一路」構想は民主主義諸国にとって脅威だ。これに対して「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想がある。
2016年のケニアでの第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で安倍首相が提唱したFOIP構想は、自由、民主主義、人権、法の支配、航行の自由など、普遍的な価値と平和の世界と繁栄を示す構想として、日米豪印、ASEAN、欧州、アフリカなど、世界で広く受け入れられている。日本発の世界戦略として引き続き、発信とその具現化に努めていきたい。
ただ、一帯一路と対峙させたり、ASEAN諸国にどちらを選択するかを迫ったりすることは賢明ではない。力ではなく、法とルールが支配する海洋秩序に支えられた自由で開かれ安定した海洋は、日本だけではなく国際社会全体の平和と繁栄に不可欠であることを訴えていくことが重要だ。
また、機微な先端技術やデータの流出を防止することは、経済安全保障の面からも重要であり、サプライチェーンもチャイナ・プラスワン、そして究極的にはワクチンの開発をはじめとした基礎研究とそれを具現化する自給力を高めることも大切だ。
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国場幸之助(こくば・こうのすけ)氏のプロフィール
1973年、那覇市生まれ。早稲田大学で比較政治学専攻。2000年、沖縄県議会議員に当選。12年、衆議院に初当選。現在は3期目。自民党副幹事長、自民党沖縄県連会長などを歴任し、20年に外務大臣政務官に就任。