4月14日、沖縄の女の節句は「浜下り」


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 4月14日は沖縄で「浜下り」(ハマウイ)という女の節句だ。旧暦3月3日に行われる恒例行事で、ひな祭りの起源にもつながり、沖縄の方言で「サングヮチサンニチー」と呼ぶ。

 重箱料理やサーターアンダギーに似たサングヮチグヮーシ(三月菓子)を持って浜辺へ行き、女性が健康などを祈願して海水に漬かる。日本では沖縄と奄美だけで行われている。その手順はまず浜辺で額に3回海水を付け、祈願し、最後は砂浜を踏みつけるというもの。

 この行事は、西暦300年頃の古代中国で起こった「上巳(じょうし)節」にさかのぼる。「上巳」とは、旧暦3月の最初の巳の日こと。のちに日付が変動しないように3月3日となった。もともとは女の子のお祭りではなく、春の訪れを喜び、無病息災を願う厄祓いの行事だった。

 当時の中国では、この日に水辺で過ごしてけがれをはらう習慣があった。上巳節が遣唐使を通じて日本に伝えられると、宮中行事として取り入れられ、後に禊(みそぎ)の神事と結び付き、紙や草で作った人形(ひとがた)で自分の体をなでることで、けがれを川や海へ流すようになったとされる。

 日本本土では「流し雛(びな)」として似たような行事が残っている地域もあるが、沖縄は上巳節の原型ともいえる。

 「浜下り」の日に浜辺に行っても、潮干狩りをするだけの人も増えているという。大潮の時期に当たり、干満差が最も大きくなり、潮が引くと遠くまで歩いていける。実際、行事を行わず、アオサやモズクなどの潮干狩りだけして帰る人が増えてきている。

 伝統行事が継承されないことは時代の趨勢(すうせい)かもしれないが、それに輪をかけ、昨年からのコロナ禍で、浜下り人口はさらに少なくなりそうだ。(T)