「ご飯食べた?」が挨拶言葉ー韓国から


地球だより

 先日の選挙で10年ぶりにソウル市長に返り咲いた呉世勲氏といえば、多くの市民が前回任期時の小中学校給食無償化を思い浮かべる。当時、議会で可決された無償化を呉氏は「福祉ポピュリズムだ」として反対し、賛否を問う住民投票が投票率未達で成立せず、市長職を追われた。今回、就任するや早速周囲から「幼稚園の給食も無償化に」と促されている。どうやら呉氏にとって給食無償化は政治家として避けて通れない鬼門のようだ。

 ところで、一日3食を食べることはかつて国全体が貧しく、食品産業も十分発展していなかった時代の韓国社会にとって切実な課題だった。だからあいさつ言葉に「ご飯食べた?」と使うのが普通だった。

 筆者が初めて韓国を訪れた約30年前も、昼飯時がとっくに過ぎた午後3時くらいに会った人に「ご飯食べた?」と言われ、「もちろん食べましたよ。もうこんな時間なんだから」とむきになって答えたことがあった。食べたのかどうか尋ねたわけではなく、あいさつ言葉にすぎないことが分からなかったのだ。

 さすがに豊かになった今はもう「ご飯食べた?」とあいさつする人を見掛けなくなった。それどころか大人も子供も栄養過多なのかストレスのせいか肥満体型の人が随分増えた気がする。このご時世、市長にはカロリーコントロールに一層気を配った給食の提供に取り組んでもらわければならないかもしれない。

(U)