浦添市長選、松本哲治氏が圧勝で3選を果たす
米軍那覇軍港(沖縄県那覇市)の浦添市への移設の是非が最大の争点となった浦添市長選が7日投開票され、現職の松本哲治氏(53)=無所属、自民、公明推薦=が、前市議で新人の伊礼悠記氏(38)=無所属=を破り3選を果たした。軍港移設を容認した松本氏が当選したことで、移設に向けて計画が加速するとみられる。(沖縄支局・豊田 剛)
過去最多の3万3千票余を獲得、米軍那覇軍港の浦添市移設は加速へ
日米両政府は浦添市沿岸部への移設を条件に2028年度以降の那覇軍港返還に合意している。玉城デニー知事と城間幹子那覇市長も移設計画に合意している。松本氏は移設を容認し、伊礼氏は反対していた。
松本氏は、軍港計画の受け入れを含め「2期8年間の私に対する信任の選挙」と位置付けた。過去最多の3万3千票余を獲得し、対立候補に1万票余の大差をつけての勝利だったが、開口一番、「コロナ禍にあって手ごわい相手で苦しい闘いだった」と振り返った。伊礼氏は元共産党市議。基地反対を振りかざしながら、組織的な人海戦術を展開。松本陣営を脅かした。
当選を受けた記者会見で、軍港問題に関して「これだけの市民が私に付託したということは、浦添市にとって苦渋の決断であったとしても、(県、那覇市との)合意の中でしっかりと協議をして進めてほしいという意思だと思う」と述べた。
選挙戦前から沖縄振興計画など軍港移設の布石を打った玉城県知事
現職有利の情勢を見越してか、玉城知事は選挙戦前から軍港移設のための布石はいくつか打っている。
1月15日、定例記者会見で、浦添市長選の結果にかかわらず、那覇市と浦添市との移設協議を続ける考えを示した。
県と那覇市、浦添市で構成される那覇港管理組合は1月30日、2月定例会を開き、玉城知事は軍港移設計画について、3者で合意した浦添埠頭(ふとう)北側への移設案を推進していくことを表明した。
沖縄県は1月29日、来年3月末で期限を迎える現行の沖縄振興計画に代わり、本土復帰50年の節目となる、令和4年度からの10年間の新たな沖縄振興計画の骨子案をまとめた。その中で、「返還予定の大規模な米軍基地の跡地を振興につなげるとともに、県全体の発展をけん引する沖縄本島中南部で世界水準で空港・港湾機能を強化し、アジアの主要都市に並ぶ100万人都市圏の形成を目指す」としている。那覇軍港の浦添埠頭への移設を前提とした一体的な空港港湾開発を盛り込んでいる。
選挙結果について玉城知事は8日、移設推進の民意が出たことも認めた。伊礼氏と軍港移設で立場が異なることが選挙結果に影響したかどうかは、「分析していないので、よく分からない」と述べるにとどめた。
「オール沖縄」候補の伊礼悠記氏の敗退で批判の矛先は玉城県知事に
その玉城知事が選挙戦で候補者とともに選挙カーに乗り、マイクを握ったのは3日午前のわずか1時間。その際、軍港移設に一切触れなかった。続いて演説した伊礼氏も玉城知事に配慮し、「軍港」について一言も話さなかった。演説先では「軍港反対」のプラカードを持った男性が静かに知事に抗議していた。
軍港に関しての知事の言動に、身内の与党からも疑問が噴出。ある与党県議は、「知事の態度は浦添市民に良い印象を与えなかった」と認める。
共産公認市議として2度トップ当選を果たした伊礼氏だが、「知事に足を引っ張られた形になった」というのが両陣営の評価だ。若くてシングルマザーという「勝てる要素がある」(伊礼選対)ことから、玉城知事を支える「オール沖縄」候補として担ぎ出された。
ただ、擁立後も「オール沖縄」は一枚岩になり切れなかった。先輩格で浦添市選出の西銘純恵県議(共産)は反発し、選挙の間、一度も姿を見せることはなかった。また、共産党が伊礼氏の党籍離脱に難色を示したため、選挙戦の出足が遅れたとの不満もあった。
自民党沖縄県連の中川京貴会長(県議)は、普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対しておきながら、工事が進んでいることから「事実上造らせている」とし、「オール沖縄」の限界を指摘した。
宮崎政久衆院議員は、「相手が軍港問題を正面に出してきて、こちらが受けて立つ形になった。結果、辺野古移設を含め県民に基地問題を考えてもらう機会になった」と指摘。「今後の国政選挙、知事選に向けて大きなインパクトになった」と語った。
= メ モ =
浦添市長選結果(浦添市選管確定値)
投 票 率 62.98%
松 本 哲 治 33,278票
伊 礼 悠 記 22,503票
無 効 780票








