不手際目立つ沖縄県の新型コロナウイルス対策

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、昨年末から一部地域で時短営業を要請してきた沖縄県はこのほど、今月11日までとされた期限を31日まで延長した。こうした中、県当局がクラスター(感染者集団)の件数を4割以上少なく発表していたことが判明し、玉城デニー知事らが釈明に追われるなど、コロナ対策の不手際が目につく。(沖縄支局・豊田 剛)


県がクラスター数を4割以上少なく発表、非公開基準は不明瞭なまま

 沖縄県は8日、昨年4月から県内で発生した新型コロナウイルス感染の全てのクラスター86件(6日時点)を公表した。内訳は、飲食関係が31件で最多。職場関係が16件、医療機関が7件、社会福祉施設と家庭内が共に6件、教育機関と保育施設が共に5件だった。クラスター関連の感染者は990人で、県内の全感染者の4分の1を占めた。

不手際目立つ沖縄県の新型コロナウイルス対策

記者会見で「緊急特別対策」について説明する玉城デニー知事=8日、沖縄県庁(豊田 剛 撮影)

 玉城知事は6日の記者会見で、「非公表を含めて4月から85件のクラスターが発生している」と発言し、会見場がざわついた。それまで県が発表していたクラスターは48件だったからだ。

 クラスターの非公開分があったことについて、玉城デニー知事は8日の記者会見で「公表のタイミングを計っていた。県が(クラスター数を)隠していたとか、公表しない方がいいという考え方を持っていたわけではない」と釈明する一方で、これまで非公開とした理由を明確にしなかった。

 引き続き行われた保健医療部の会見では、非公開の理由とその基準について質問が集中した。

 糸数公保健衛生統括監は、「何を非公表とするかの基準は決めていない」とした上で、これまで非公開にしたケースについて①感染が収束したもの②家庭内などのプライバシーを考慮したもの――などだったと述べた。また、飲食店が軒を連ねる地域で発生したクラスターを既に公表している場合、近隣で発生したクラスターを公表することによる感染抑止効果が薄いと説明した。

 プライバシー案件を除いては、クラスターを公開しない基準の説明にはなっておらず、ほとんどの記者が納得していない様子だった。

 糸数氏は、今後も一定期間を置いた後に公表する場合があると説明し、「基準はこれから総括情報部で作る」と話した。8日に公表されたクラスターリストは、知事の発言を受け、急遽(きゅうきょ)作成したものであることを暗に認めた。糸数氏は今後も、プライバシーへの配慮などを理由に「一定期間は非公表にする場合がある」との考えを示す一方、基準はこれから議論するとした。

「緊急特別対策」を発令、医療提供体制の逼迫強く懸念される状況

 県は昨年12月14日、「年末年始の医療崩壊を回避するための緊急特別対策」を発令していたが、大人数の忘年会・新年会によるクラスターが複数確認される事態に発展している。

 緊急特別対策では12月14日から那覇と浦添、沖縄の各市の飲食店に対し、午後10時までの営業時間短縮を要請。宜野湾と名護の両市は同月25日に追加された。

 年末年始は救急医療体制を維持できたが、新型コロナ以外の病床利用率は正月明けから再び増加傾向にあり、10日現在はコロナ患者の病床占有率は70%を超え、県が判断する警戒レベルで最高段階となる4段階(感染まん延期)に達した。新規感染者数も高い水準で推移していることから、県は「医療提供体制の逼迫(ひっぱく)が強く懸念される状況」と認識している。県は8日、5市に加えて、離島の宮古島と石垣両市にも時短営業を要請した。

年末年始に「移入例」増加、「宴会」のみで「成人式」の自粛求めず

不手際目立つ沖縄県の新型コロナウイルス対策

首里城の守礼門の前で記念撮影する新成人ら=10日、那覇市の首里城公園(豊田 剛 撮影)

 年末年始にかけ、観光やビジネス、帰省などで県外から新型コロナウイルスを持ち込む「移入例」が増加していることが分かっている。12月1日から1月6日の間に確認された移入例は56人。感染者の総数に占める移入例の割合は、年末年始を挟んだ2週間で11%になった。昨年9~11月は3%だった。水際対策が必要になってくるが、来県時に空港で発熱を感知し感染が分かった事例はまだない。

 とりわけ成人式は移入例が増えるリスクが高い。県のコロナ対策専門家会議の委員で県立中部病院感染症内科の高山義浩医師は自身のSNSで、新成人が帰省して家族に感染させる可能性を踏まえ、式のオンライン開催を呼び掛けていた。

 これに対し、県は「宴会自粛」を呼び掛けるにとどめた。成人式の対応は自治体に任せ、緊急事態宣言が出ている1都3県から帰省しての参加自粛も求めなかった。