安全保障直結の宮古島・浦添・うるま3市長選

 今年は衆院議員(10月21日で任期満了)選挙が行われる選挙イヤーだ。沖縄県では1月17日投開票の宮古島市長選を皮切りに、浦添、うるまの3市長選が4月までに行われる。いずれも保守系現職と「オール沖縄」候補が激突。米軍基地と自衛隊駐屯地を抱え、安全保障に直結する3市で保守市政を維持できるかどうかは、衆院選に向かう県内政治と玉城デニー県政の行方を左右することになりそうだ。(沖縄支局・豊田 剛)


8市町村長選で玉城県政に逆風、「オール沖縄」は存在感示せず

 昨年は八つの市町村長選が行われたが、玉城知事を支える「オール沖縄」は存在感を示すことができず、玉城県政に逆風が吹いた。

 8月9日に行われた今帰仁(なきじん)村長選では、玉城知事を支持する「オール沖縄」が支援した現職の喜屋武(きゃん)治樹氏が、保守系が推した元村議会議長で新人の久田浩也氏に敗れた。革新系の一部が久田氏の支援に回るなど、「オール沖縄」の結束の弱さを露呈した。

 翌月の西原町長選は革新系新人同士の争いとなったが、「オール沖縄」が推す候補が敗北した。

安全保障直結の宮古島・浦添・うるま3市長選

北中城村長選で当選した比嘉孝則氏=2020年12月、沖縄県北中城村(豊田 剛撮影)

 北中城(きたなかぐすく)村でも同様の結果となった。4期16年勤めた現職の新垣(あらかき)邦男氏が、照屋寛徳衆院議員の後継として次期衆院選に沖縄2区から立候補する予定となったことを受け、12月6日に実施された。革新系新人2人による争いとなり、新垣氏の後継に指名された元村議の天久(あめく)朝誠氏は、元県職員の比嘉孝則氏に大差をつけられて敗北した。玉城知事は天久氏の応援に入ることすらできなかった。

保守系現職に挑む「オール沖縄」、山場は浦添市長選

安全保障直結の宮古島・浦添・うるま3市長選

今年の沖縄県市長村長選挙と市町村議員選挙の日程

 今年前半に行われる宮古、浦添、うるまの市長選は、いずれも自公が推す保守系候補に対し、「オール沖縄」が挑む構図になる見通しだ。

 宮古島市長選は、4期目を目指す自民系現職の下地敏彦市長(74)に、自民党会派に所属していた元県議の座喜味一幸氏(70)が「オール沖縄」側の候補として挑む構図だ。

 根っからの保守政治家の座喜味氏が革新陣営から出馬するため、自民党県連幹部は「最もやりにくい相手になった」と頭を抱える。17年の前回市長選で保守分裂で両者が出馬したが、革新陣営も分裂選挙となったため、かろうじて下地氏が市長の座を守った形だ。

 自公が推薦し、与党市議18人全員が現職を支援する。下地幹郎衆院議員の自民党復党を求める国場組の国場幸一会長ら一部の経済界は宮古島市と那覇市に「保守合同事務所」を設置。下地氏復党のためにも「絶対に落とせない」(会社経営の男性)と気を引き締める。

 市長選の争点の一つに、宮古島への陸上自衛隊の配備計画がある。警備部隊やミサイル部隊が19年に配備されているが、今年3月には島の南東部の保良(ぼら)鉱山跡地に弾薬庫が完成する。現職の下地氏はこの計画を進めている。これに対し、もともと自衛隊配備推進派の座喜味氏が、自衛隊配備に反対する革新と折り合いをつけるかが注目される。

安全保障直結の宮古島・浦添・うるま3市長選

日米両政府が那覇軍港の移設地に決めた浦添ふ頭(豊田 剛撮影)

 玉城知事にとっての最大の山場は、2月7日投開票の浦添市長選だ。3期目を目指す現職の松本哲治氏(53)と元共産市議の伊礼悠記氏(37)が対決する。最大の争点は那覇軍港の浦添移設だ。玉城知事と移設元の城間幹子那覇市長は浦添ふ頭への移設を容認しているが、伊礼氏は移設反対を公約に掲げる。

 故翁長雄志前知事や城間氏は辺野古には反対した一方で、那覇軍港の浦添移設は容認してきた。翁長氏の政治姿勢を受け継いだ玉城知事がどう市長選に対応するかが注目される。

 在沖海兵隊の主力部隊が駐屯するキャンプ・コートニーがあるうるま市は、現在3期目の島袋(しまぶく)俊夫氏が病気療養で不出馬。島袋氏の後継には、市議の中村正人氏(55)が選ばれた。「オール沖縄」側は、沖縄国際大の照屋寛之教授(68)を擁立することを決めた。

3市長選は衆院選の前哨戦、玉城県政の行方をも占う

 自民が全てで勝って知事を追い込めるか、あるいは、「オール沖縄」が巻き返すか。3市長選は衆院選の前哨戦となるだけでなく、22年9月29日に任期満了を迎える玉城知事にとっては知事選に向けての試金石となりそうだ。