知事派敗れる、沖縄県議会議長選で赤嶺氏が選出

 6月7日に投開票された沖縄県議選後、初めてとなる県議会が6月30日、開会した。本会議の最初に行われた議長選挙で、与党でありながらも知事と一定の距離を置く「おきなわ」の赤嶺昇氏(53)が選出された。今後4年間、玉城デニー知事は厳しい県政運営を強いられることになる。(沖縄支局・豊田 剛)


与党の結束の乱れが露呈、玉城知事は厳しい県政運営に

知事派敗れる、沖縄県議会議長選で赤嶺氏が選出

県議選後の初登庁で、記念撮影する県議=30日、沖縄県那覇市の県議会前(豊田 剛撮影)

 30日午前、県議会の議場が騒然とした。48人の議員全員が無記名で投票し、最年長議員として暫定的に議長席に座った玉城ノブ子議員(共産)が投票結果を読み上げた。

 「赤嶺昇さん26票、崎山嗣幸(しこう)さん22票。新しい議長には赤嶺昇さんが当選されました」

 自民党会派からはガッツポーズする議員が出た。革新系会派のある議員は手で×印を作り、顔をしかめた。

 野党の自民、公明と中立会派に推された赤嶺氏が、下馬評の高かった社民の崎山氏を逆転し、議長の座を勝ち取った。

 与党の結束の乱れが露呈した形で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設に反対する玉城知事の県政運営は難航も予想される。

 県議会(定数48)議員選挙の結果、知事を支える革新系与党は改選前から1減の25議席となり、かろうじて過半数を維持した。

 改選後の会派別の内訳は、与党が、社民や地域政党・沖縄社会大衆党で構成する「沖縄・平和」8人、共産7人、「てぃーだネット」7人、「おきなわ」3人。「てぃーだネット」は「おきなわ」から分裂した革新色の強い議員が中心になって結成され、今回初めて議席を獲得した立憲民主公認の女性、翁長雄志前知事の次男・雄治氏が加わっている。

 一方、野党は自民が19人、公明が2人の計21人で、元維新系の中立会派「無所属の会」が2人となっている。

 会派「おきなわ」は玉城知事を支援する「オール沖縄」勢力が県議選で主導した候補者調整や支援の在り方に不満が強く、他の3会派とは距離を置く。所属の3人は、安慶田(あげだ)光男元副知事、大手ホテルグループの平良朝敬オーナーら翁長前知事を保守側から支えた政策集団「21令和の会」が推した。

 ただ、「おきなわ」は三者三様だ。

 赤嶺氏は保守系の個人・団体に支援されている。中頭郡区選出の新垣光栄氏は、社会大衆党の喜納昌春元議長の後継。国頭郡区の平良昭一氏は玉城知事の衆院議員に公設秘書を務めた経験がある。新垣、平良の両氏は共に落選を経験した苦労人でもある。今後4年間、同会派の動向が注目される。

新議長に就任した赤嶺昇氏「県政に是々非々で臨みたい」

知事派敗れる、沖縄県議会議長選で赤嶺氏が選出

県議会の議長に選出され、記者団の質問に答える赤嶺昇氏=30日、沖縄県那覇市の県議会前(豊田 剛撮影)

 赤嶺氏は議長就任後、記者団を前に「議長として県政に是々非々で臨みたい」と述べた。議長選をめぐる野党との事前の調整を否定した上で、「与党というスタンスは変わっていないが、他の与党会派との信頼関係が今はない」と話した。

 複数の野党系県議の話をまとめると、議長に意欲のあった赤嶺氏と、2年後の知事選に向けて県議会で主導権を握りたい自民側の思惑が一致した。直前まで投票行動が表に出ないよう、「おきなわ」、自民ともに箝口(かんこう)令を敷いていた。

 また、副議長選挙は、仲田弘毅氏(自民)が24票を獲得し、与党3会派が推した渡久地修氏(共産)は22票だった。「おきなわ」は赤嶺氏が仲田氏に投票し、他の2人は白票を投じた。

 県議会の委員の選挙でも「おきなわ」は白票または非与党に投票したことで、五つの委員会のうち四つで非与党議員が委員長に就任した。

 辺野古移設をめぐる訴訟の提起には議会の可決が必要なケースがあり、わずかの差で過半数となっている与党がまとまらなければ、移設阻止を掲げる玉城知事の政府への対抗手段にも影響する可能性がある。自民は「おきなわ」を中立会派に引き込み、知事与党を過半数割れに追い込みたい考えだ。

自民党会派代表の島袋大氏「オール沖縄の崩壊だ」

 自民党会派代表の島袋大氏は、議長選の結果について「オール沖縄の崩壊だ」と評価した上で、「『おきなわ』は中立という認識だ。2年後の(知事選での)県政奪還に向けて、玉城県政に揺さぶりをかける」と牽制(けんせい)した。

 一方、ある与党の県議は「事態は厳しいが、有権者との約束とどう整合性を取るのか、会派『おきなわ』の今後の行動を見ていく」と語った。

 7日から代表質問が始まったが、自民党など野党会派の玉城知事への追及はこれまで以上に厳しさを増しそうだ。