沖縄県議選、与党が辛うじて過半数を維持
任期満了に伴う沖縄県議選(定数48)は7日、投開票され、共産、社民両党など米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古キャンプ・シュワブ沖への移設に反対する玉城デニー知事の支持派が過半数を維持した。一方、自民が議席を伸ばし、2年後の知事選に向け勢いをつけた形だ。(沖縄支局・豊田 剛)
20議席から23議席へ野党が躍進、知事選へ弾みがつく
コロナウイルス感染の影響が残る5月29日、各候補者は出陣式でソーシャルディスタンスを保ち、決起大会などの集会を極力避けるという異例の選挙戦となった。投票率は46・96%で、前回(53・31%)を大きく下回った。
即日開票の結果、玉城知事を支える県政与党が25議席を獲得し、かろうじて過半数を維持した。今回、立憲民主党が県議会で初めて議席を獲得した。翁長雄志前知事を支持した市町村の中道系議員でつくる「新しい風・にぬふぁぶし」からは翁長氏の次男、雄治氏が当選し、初めて議席を得た。一方、野党の自民や公明、保守系無所属候補の「非与党」は合計で23議席となり、過半数にわずかに及ばなかった。
当選者の党派別内訳は、県政与党が共産7人、社民4人、地域政党・社会大衆党(社大)2人、立民1人、にぬふぁぶし1人、無所属10人の計25人。野党の自民は17人、野党系無所属は2人。中立は公明の2人、元維新系の無所属2人だった。
那覇市・南部離島区(定数11)は、与党6、野党4、中立1と、与党優位の勢力は変わらなかった。
野党が議席を伸ばしたのは以下の3選挙区だ。島尻・南城市区(同4)は、石原朝子氏が初当選するなど自民公認が2人当選した。自民の女性議員が当選したのは12年ぶりとなる。一方で、当選6回で社大委員長の大城一馬氏が落選した。
沖縄市区(同5)は、玉城知事の旧知の仲で、選挙戦終盤、自ら応援入りするなどしてテコ入れした革新系無所属の玉城満氏が涙をのんだ。その結果、自民が2議席を獲得し、公明と合わせて3議席となった。
辺野古移設反対を「民意」として苦戦、焦点にならず
3議席を4人で争った宜野湾市区(同3)も与野党の勢力が逆転した。保守中道無所属の呉屋宏氏が返り咲き当選を果たす一方、社民で2期目を目指した宮城一郎氏が議席を失った。普天間飛行場の一日も早い危険性除去を最大の公約に訴え、3選を果たした又吉清義氏(自民)は、「新型コロナウイルスで影響を受ける市民からどうにかしてほしいという声が多かった」と述べ、基地問題は争点にならなかったと述べた。
辺野古移設に伴う埋め立て工事は進んでいる。県は訴訟を連発するものの敗訴続きで、阻止の見通しが立たない。辺野古移設反対を「民意」として選挙戦を戦った社民系や無所属系の多くの候補が苦戦したことからも、基地問題は争点にならなかったことが分かる。
コロナウイルス感染対策で、できるだけ人との接触を避けるため、街宣や有権者との直接対話などの“地上戦”ができないことから、知名度の低い新人や組織の弱い候補は苦戦を強いられた。候補者が運動を自粛し、各政党は中央からの応援入りを取りやめた。
こうした特殊性について宮崎政久衆院議員は、「SNSやネットでの戦い方が重要になるきっかけになる選挙だった」と振り返った。「有権者が公約を熟読し、しっかり政策論争ができる」と述べ、民主主義の成熟の良い機会になると前向きに捉えた。
これで、与野党差はわずか2議席になった。議長は与党側から選出されるのが通例で、そうなれば議席差は1となる。与党の中に知事に対して是々非々の無所属議員が1人いる。自公がこの議員を取り込むことができれば、与野党の構造が逆転する。
今回は、コロナウイルス感染の影響で十分な選挙活動ができないことなどを理由に、公明が立候補者を4人から2人に減らした。こうした影響も手伝い、4選挙区で過去最多となる12人が無投票当選した。候補者の4分の1が選挙をせずに議席を獲得したことで、有権者には不満が残る形となった。
玉城知事「予想より厳しい」、経済の立て直し求められる
選挙結果を受け玉城知事は、「予想したよりも厳しい結果になった」とした上で、「過半数維持できたことは県政運営に評価をいただいたと思っている」と述べた。だが、辺野古移設阻止の道のりは険しさを増す見通しだ。
自民党県連は、議席を伸ばした要因として、「コロナ渦で危機にある県民の生活と経済の立て直しを求める有権者の声が反映されたのではないか」と分析。2年後の知事選での県政奪還に向けて勢いをつけたいところだ。
=メ モ= 党派別議席獲得数(定数48)
▼ 与 党 25 ▼ 野 党 23
立憲民主 1(改選前0) 自 民 17(改選前14)
共 産 7( 同 6) 公 明 2( 同 4)
社 民 4( 同 5) 無 所 属 4( 同 2)
社 大 2( 同 3)
にぬふぁぶし1( 同 0)
無 所 属 10( 同 11)