観光客の激減で行き場を失った壺屋焼
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
新型コロナウイルスの感染拡大で、国内外からの観光客が激減したことに伴い、売り上げが落ち込んでいる壺屋陶器事業協同組合(島袋常秀理事長)はこのほど、インターネットを通じて資金を募るクラウドファンディングの活用を始めた。
同組合は、「行き場を失った『やちむん』(焼き物)の行き先の確保、それを作り続ける陶工たちを支える」ために、所属する26カ所の窯元の活動支援として、各窯元の店舗やお土産品店の品物をクラウドファンディングの返礼品として提供する。
那覇市壺屋のやちむん通りは国内外の観光客でにぎわう人気エリアだ。路地には数多くの窯元や陶器店が並び、陶器の制作体験ができる所もある。古民家もあって、那覇市の中では沖縄らしい風情が残る貴重な地域だ。
中国武漢で新型コロナ感染が広がった2月ごろから、やちむん通りでは客足が途絶え始め、3月にはほとんど人通りがなくなった。読谷村の「やちむんの里」も同じ状況で、毎年2月に開催している県内最大級の陶器市「読谷やちむん市」も中止となった。読谷村のある窯元は「1日の売り上げがゼロの日が多く、前年比で9割は落ち込んでいる」と話す。
組合によると、焼き物ファンは、何度も来県して工房を訪れ、直接品定めして購入するリピーターが多いという。ただ、渡航自粛が解除された後も以前のような客足が戻るまでには時間がかかり、厳しい状況は続くとみる。言い換えれば、壺屋焼は県民に愛用されているとは言えない状況にあるのだ。
国内外の観光が正常に戻るまでは県内需要を喚起することも必要であろう。ただ、多くの県民にとって壺屋焼は“高嶺の花”だ。県民も手軽に購入したくなるような仕掛けが欲しい。
(T)