6月に沖縄県議選、保守中道で過半数になるか?

新型コロナで票読み難しく、集会の中止や延期が相次ぐ

 任期満了に伴う県議選(6月7日投開票)まで2カ月を切った。48人の定員に対し、これまでに現職、前・元職、新人合わせて68人が出馬に向けて準備を進めている。革新系の玉城デニー県政にとって、中間評価の位置付けとなる。12年ぶりに保守・中道が過半数を奪還できるかが焦点となる。(沖縄支局・豊田 剛)


政策集団「21令和の会」結成、「オール沖縄」の一角崩れる

 3月27日に県議会2月定例会が終了し、通常ならば選挙戦に本格的に突入するところだが、今年は事情が違う。新型コロナウイルスの感染防止のため、事務所開きや支援者集会の中止や延期が相次いでいる。4月6日現在、感染の心配からいまだに事務所開きを行えずにいる立候補予定者もいる。

6月に沖縄県議選、保守中道で過半数になるか?

沖縄本島南部で行われた事務所開きの参加者はマスク姿で距離を空けて着席した(豊田剛撮影)

 3月下旬、南部地域で開かれた保守系現職の事務所開きでは、入り口で必要な人にマスクを配布し、参加者全員に除菌スプレーを吹き掛けた。広いホールには、間隔を空けて椅子が設置された。頑張ろう三唱も全員がマスクを着用したまま、極力大きな声を出さずに行った。

 「集会を開けない分、知名度を上げるのに苦心している」。本島中部の新人立候補予定者は、企業や地域のあいさつ回りをしても「こんな時期に来るのか」といぶかしがられることも多く、「どぶ板選挙ができず、名前を知ってもらうことすら難しい」と頭を抱える。

 玉城県政が誕生したのは2018年10月。それから初めての県議選で、経済振興や医療・福祉、基地問題など、1年半余りの県政運営に対する中間評価とも位置付けられる。新型コロナによる自粛ムードが県議選にどのように影響するかは未知数だ。

 「コロナウイルスの感染拡大で県政の危機能力が問われている。今が攻めどころ。ピンチをチャンスに変えたい」

 ある保守系の立候補予定者はこう意気込んだ。

 県議会は現在、定数48のうち、欠員2議席を除くと、知事を支える革新系与党が26人、野党は自民が14人、中立は公明4人と旧維新系2人だ。

 立候補予定者68人のうち、玉城県政を支持する共産や社民など与党系が30人、玉城県政に批判的な野党系が28人。7人は中立の立場を取る。

 政党別では、野党の自民が現職13人、新人6の計19人を公認、新人2人を推薦している。単独では全員当選でも半数の24議席に達しないが、国政で連立を組む公明(現職3人、新人1人)との連携で過半数は可能となる。また、自公で過半数に満たない場合は、旧維新系とも組み、過半数奪還を狙う。

6月に沖縄県議選、保守中道で過半数になるか?

保守系立候補予定者を激励する仲井真弘多元知事(右)と國場組の國場幸一会長=沖縄本島南部(豊田剛撮影)

 自民は仲井真弘多(なかいまひろかず)元知事と経済界の重鎮で國場(こくば)組会長の國場幸一氏を中心に企業回りを徹底。故翁長雄志前知事の県政の支えた「オール沖縄」の誕生により失った求心力を取り戻そうと必死だ。ただ、「コロナウイルス感染拡大の影響で緊縮財政・事業縮小を余儀なくされる企業が相次ぎ、従来のようにはいかない」と関係者は話す。

 与党は、社民が新人1人を含む5人を公認し、地域政党・社会大衆党は現職3人を公認した。共産は現職6人、元職1人、新人1人の計8人を公認し、議席の上積みを図る。さらに、立憲民主が新人1人を擁立。これらに、会派「おきなわ」を形成する革新系無所属議員を加え、県議会で過半数の議席獲得を目指す。

 与党が過半数の現県議会の構成が変動するかどうかが最大の焦点。

 普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対で一致する革新系は、2014年の知事選で翁長氏が勝利して以降、知事選と国政選挙(選挙区)を合わせて12勝1敗だ。

 共産党は3月28日、聴衆を集めずに那覇市で立候補予定者7人が演説。「オール沖縄」勢力の過半数確保に向けて決意を述べた。社民党の現職県議は、「ここ(県議選)で過半数を割るようなことがあれば、県政の流れを失うことになる」と気を引き締める。

 「保革を超える」をスローガンに翁長氏が県政の主導権を握って以来、辺野古移設反対のワンイシューでまとまってきた「オール沖縄」だが、ここにきてその一角が脱落した。

 翁長県政の誕生に寄与した一部企業を中心とした勢力はこのほど、玉城県政を支持しない方針を決め、新たに政策集団「21令和の会」を立ち上げた。翁長氏の側近だった安慶田(あげだ)光男元副知事が中心になり、一部企業が支援する形で、県議選に独自候補を擁立することを目指した。ただ、こうした動きに対し、自民は警戒心を示し、広がりは限定的で、候補者擁立に至っていないのが現状だ。

 県選挙管理委員会は6日の段階で、選挙期日変更はないとしている。