「万国津梁会議」の業務をめぐる問題で県を提訴

沖縄県民4人、管理委託費の返還を玉城県知事に求める

 玉城デニー知事が掲げる目玉政策の一つである「万国津梁会議」の業務をめぐり、県政刷新を求める県民らはこのほど、委託契約は無効だとして、県が支払った委託料金を返還させるよう玉城知事に求める住民訴訟を那覇地裁に起こした。同会議をめぐっては、業務委託締結に至る経緯や財政面で不透明な部分が多いと県議会で指摘されている。(沖縄支局・豊田 剛)


知事は指揮監督義務を怠る、委託は知事選応援の報償か

 沖縄県は万国津梁会議の支援業務と運営が不当に行われているとし、提訴された。委託料2407万円のうち、これまで支払われた2166万円の返還を求めるもの。

記者会見で万国津梁会議について批判する徳永信一弁護士(左)、原告の平安座唯雄氏(左から2人目)ら=2月23日、沖縄県庁

記者会見で万国津梁会議について批判する徳永信一弁護士(左)、原告の平安座唯雄氏(左から2人目)ら=2月23日、沖縄県庁

 県は公募で万国津梁会議の事業委託者を募り、決定した。ところが、最終的に申し込んだのは沖縄県内外四つの企業・法人からなるコンソーシアム「万国津梁会議設置等支援業務スタートチーム」のみで、昨年5月、随意契約で締結された。

 このコンソーシアムは、山形県に本部を置く一般社団法人「子ども被災者支援基金」(鈴木理恵代表)が幹事となり、徳森りま氏が沖縄事務所長を務める。2月26日、県議会の一般質問では、島袋大氏(自民)が「山形の法人は説明会に参加していない。県職員が受注業者に対し情報を漏洩(ろうえい)した入札談合の疑いがある」と追及した。

 受注の前夜、玉城知事が徳森氏と万国津梁会議の委員、県職員らと会食したことが問題視され、県議会でも激しく追及されている。特別職である県知事は法令違反には当たらないが、謝罪に追い込まれた。

 県議会で証言を求められた徳森氏は、疑惑が出るとすぐに代表の座を辞任。担当者を配置することなく、代表空席のまま放置していることを原告は問題視した。また、県が受託者に対し、5分野の会議のうち3分野しか実施されていない段階で、進捗度合いを確認しないまま業務委託料の約9割を支払ったことについて、「知事は当該職員への指揮監督義務を怠っている」と指摘した。

 革新県政に批判的な「県政の刷新を求める会」(江崎孝代表)の会員4人は昨年12月、住民監査請求を行ったが、委員3人の意見が一致しない「合議不調」と判断された。委員のうち1人は一部返還すべきだと指摘。もう1人は、支出は不当ではあるが、「返還を求めるには至らない」とした。その上で、監査請求の結果報告はこうまとめている。

 「万国津梁会議の運営にかかる全体日程及び議事内容の不透明性、会議テーマの一部の未調整、情報収集の遅れ等により事務手続きに混乱が見られ、同事務事業の熟度、計画性及び制度に疑問が残る」「県民から委託の必要がない、契約内容が正当性・妥当性を欠いている、違法・不当な公金の支出であると疑念を持たれることになったと思料する。これを真摯に受け止め改善していただきたい」

 2月23日、沖縄県庁で記者会見した徳永信一代理人弁護士は、「業務支援は県庁でできるもので、必要なかったもの。3月19日付で那覇地裁に訴状を提出した」と報告した。原告で元宜野湾市議の平安座唯雄氏は、「県議会でも荒れた大変な事件にもかかわらず、地元メディアがあまり追及しないため、訴訟の形を取らざるを得ない」と述べた。江崎氏は、受注業者の代表は知事選の時から玉城氏を応援していた。委託は報償ではないか」と批判した。

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「万国津梁会議」が米軍基地問題で提言

革新系シンクタンク寄りと批判も

「万国津梁会議」の業務をめぐる問題で県を提訴

玉城デニー知事(右)に提言を手渡す柳沢協二委員長=2月26日、沖縄県那覇市のホテル

 2019年5月に発足した米軍基地問題の「万国津梁会議」5分野のうち、在沖米軍の整理縮小を重点的に協議する「米軍基地問題に関する万国津梁会議」(委員長・柳沢協二元官房副長官補)は2月26日、玉城知事に提言書を手渡した。

 提言では、普天間代替施設について、翁長前知事と玉城知事、地元メディア、革新系団体が使用する「辺野古新基地」という名称を採用。しかも、7人の委員の多くは、革新県政と親和性の高いシンクタンク「新外交イニシアチブ」(ND)の評議員または支持者で、会議の公平性に疑問が持たれている。

 提言は、辺野古崎は軟弱地盤であるため完成は困難で、政府の見通しでも工期はこれから10年以上必要で現状でも1兆円近く掛かっている費用がさらに膨張すると指摘。一方で、普天間基地の危険性除去と運用停止を可能にする方策を早急に具体化すべきだとした。また、米軍基地を整理・縮小するには「本土を含めたアジア・太平洋地域に海兵隊を分散移転させるべき」と盛り込んだ。

 玉城知事は「速やかに県の政策や取り組みにしっかりと取り入れたい。提言を基に、対話による解決のための会談を菅義偉官房長官に申し入れたい」と述べた。