那覇空港の第2滑走路、来月26日供用を開始

那覇でシンポを開催、アクセス難や軍民共用などが課題

 那覇空港の第2滑走路が3月26日、供用開始される。これを前に、「沖縄を更に発展させる世界最高水準の国際リゾート・ビジネス空港」と題したシンポジウムがこのほど、那覇市で開催された。世界で最高の水準のリゾート地にふさわしい空港を目指すに当たり、ターミナル整備やアクセスの向上など、取り組むべき課題は多いことが浮き彫りになった。(沖縄支局・豊田 剛)


沖縄本島西海岸の一帯を海上輸送と航空輸送の一大拠点に

二つの滑走路間海域を埋め立て旅客ターミナルビル移転も

 那覇空港の第2滑走路の造成工事は14年1月に始まり、約6年の歳月をかけて3月26日の供用開始にこぎつけた。現在の滑走路から約1300㍍離れた沖合を約160㌶埋め立て、全長2700㍍の滑走路を造り上げた。総事業費は約2074億円だ。

那覇空港の第2滑走路、来月26日供用を開始

急ピッチで工事が進む那覇空港の第2滑走路(豊田剛撮影)

 那覇空港は、現在の滑走路1本で安定的に運用できる発着回数を13万5千回としている。18年度の発着回数はこれを大きく上回る16万4千回で、許容量を大幅に超えた。

 また、那覇空港は自衛隊も共同使用しており、中国機への警戒のためのスクランブル発信は毎年右肩上がりに増えている。空港過密化による離発着遅れは日常化している。

 第2滑走路の増設により、離着陸回数は最大で約24万回に増える。ターミナルに向かうためには第2滑走路を使う航空機は第1滑走路を横切らなければならず、2本の滑走路の能力を最大限生かすことができない問題があったが、2本の滑走路の飛行経路を分離することで独立運航が可能になり、受け入れ規模が大幅に拡大する。

 「第2滑走路の増設で空港のポテンシャルは格段に大きくなるが、あくまでもポテンシャルで、経済の持続的発展につなげる必要がある。世界のどこにもない水準の空港にしていくのが我々の使命だ」

那覇空港の第2滑走路、来月26日供用を開始

シンポジウムの登壇者は那覇空港の未来像について意見を出し合った=1月31日、沖縄県那覇市のホテル(豊田剛撮影)

 シンポジウム主催者(那覇空港拡張整備促進連盟、沖縄県経済団体会議など)を代表して、沖縄県経済団体会議の石嶺伝一郎議長はこう強調した上で、将来的には、空港に隣接する那覇軍港から浦添市の牧港補給庫(米軍キャンプ・キンザー)までの沖縄本島西海岸の一帯を、海上輸送と航空輸送を組み合わせた「シーアンドエアの一大拠点とする」と意気込んだ。

 ターミナルの駐機場は43スポットから最大60にまで増えるが、「これでも足りない」という声が多数を占める。また、国際線ターミナルが手狭で、荷物チェックと出入国手続きで時間がかかり過ぎるため、苦情は絶えない。那覇空港拡張整備促進連盟によると、二つの滑走路間の海域を新たに埋め立て、2本の間に旅客ターミナルビルを移転させ、効率よく航空機を運用させるプランがあるという。また、新たなターミナルビルとともに、ホテルや商業施設、コンベンション施設、レンタカーステーションなどの機能を導入したい考えだ。

 シンポジウムでは、加藤一誠慶応大学商学部教授が「2本目を造るのは遅すぎたぐらいだ」と指摘した。1本の滑走路の空港では旅客数は国内では福岡空港に次いで第2位(2011年)で、1405万人だ。加藤氏は、地方空港で撤退が早い傾向にある格安航空(LCC)を持続的に就航させることと、LCCを避ける富裕層をどう誘致するかが課題になると指摘した。

那覇空港の第2滑走路、来月26日供用を開始

沖縄県の幹部や経済界などから多数が来場した=1月31日、沖縄県那覇市のホテル(豊田剛撮影)

 神戸大学大学院海事科学研究所の松本秀暢(ひでのぶ)教授は、「滑走路を増設しても航空機の就航が大幅に増えないことが多い」とし、その土地の経済や観光、PRが好調であることがポイントになると説明した。

 「空港で1時間もレンタカーを待つ状況は徐々に改善されているが、まだ不十分」だと苦言を呈したのは、那覇商工会議所観光サービス部会の白石武博副部会長。「年間観光客1千万人は達成したが、県民全体が幸せなのか、中身の検証が大事であり、質の高い観光を受け入れる体制ができていないことも問題だ」と強調した。

 また、當銘健一郎元県土木建築部長は、県内での大型公共工事は「遅れるのが通常」とした上で「滑走路拡張計画当初は7年の工期だったが、仲井真弘多(ひろかず)知事(当時)をはじめとする県民の熱い気持ちがあって1年短縮できた」と指摘。2022年に期限を迎える現在の沖縄振興計画に空港機能拡充や抜本的な長期的ビジョンがなかったことを踏まえ、「今は計画の総点検、各種施策のビジョンをつくり、次回の振興計画にそれを盛り込むべきだ」との持論を展開した。