クルーズ船那覇港に、新型肺炎と豚熱の二重打撃


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 横浜発着の大型クルーズ船の乗客から新型コロナウイルス感染が確認されているが、途中、那覇港に停泊していることから、沖縄県内にはいつ感染者が出てもおかしくない、との危機意識がある。

 それに追い打ちを掛けるように豚熱(豚コレラ)が沖縄を襲っている。1月にいったんは収束したかにみられた豚熱は、2月に入ってからも沖縄市の養豚場でも発症例が見つかったのだ。

 この影響は養豚産業にとどまらない。1月25日と26日に那覇市で開催予定だった大規模な食のイベントが中止となった。また、うるま市の恒例の闘牛大会も3月まで延期に。沖縄市の動物園では、アグー豚とイノシシの展示をしばらく取りやめるなど、各地で影響が出ている。

 県外の観光客を中心に県産豚を不安視する声が相次いでいる中、那覇市のホテルの支配人は「豚コレラで少し影響が出ていた矢先のコロナウイルスだ。団体客が来なくなり、かなりの影響が出ている」と話す。

 うるま市で養鶏場を経営するノーマン・ウェインさんは、「豚コレラの発生によってあれもこれも中止にするのはいかがなものか。逆に豚肉の消費を盛り上げるキャンペーンを打つべきではないか」と苦言を呈した。

 豚は沖縄の食文化に欠かせない。足や耳、内臓、さらには血液までが食材となり、「鳴き声以外はすべて食べる」とも言われる。

 ワクチン接種をめぐっては、県の養豚農家や農林水産省は早い段階からワクチン摂取の実施を要請していたが、玉城デニー知事が決断を下したのは発生確認から12日後の1月22日だった。危機的状況にあるからこそ、知事の決断は重要なのだ。

(T)