握手にも善しあし


地球だより

 韓国は握手社会だ。初対面でも握手、友人や知人と会った時はもちろん握手、仕事上なら異性とも握手する。筆者がこちらで握手した相手で今も思い出に残る2人の政治家がいる。

 一人は親指の付け根部分が驚くほど盛り上がっていた李明博元大統領。財界人時代から通算してどれほど多くの人と握手を交わせばこんな手になるのだろうかと思ったものだ。

 もう一人は若い女性たちが握手を求めて並ぶほどの人気だった当選前の文在寅大統領だ。当時はこんな酷(ひど)い政治をするとは夢にも思わなかった時期で、あのソフトイメージに引かれつい握手をしたくなるのだと聞いたことがある。

 最近は中国発の新型肺炎で握手をするのも憚(はばか)られるムードがある。久しぶりに会ったある年配の韓国男性に握手を求めると、「ダメダメ~」と言いながら体をのけ反らせて拒否した。後で知人が「こんな時期でタッチさえ嫌がる人がいるんでしょう」と言っていた。

 だが、そのくらいなら可愛いものだと言いながら恐怖の体験談を語ってくれた人もいる。親北朝鮮の活動から北朝鮮の独裁に反対する民主化運動に転向したその人はある講演会で話し終えた後、握手を求めてきた男が手のひらに猛毒のVXを塗っていたことが判明し、後でその事を警察から聞かされたという。体に異変はなかったというから幸いだ。

 握手を悪用するなんて恐ろしいことを考えるものだ。くわばら、くわばら。

(U)