米国出身の学生が高校生に夢と希望を与える


夏休み中OISTで「サイエンス・メンター・プログラム」

 沖縄県内高校生のための「沖縄サイエンス・メンター・プログラム」がこのほど、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で行われた。学生や研究者によるアドバイスは、理科系の分野での活躍を夢見る高校生に将来に向けての方向性を与えるものとなった。(沖縄支局・豊田 剛)

今年で4回目、興味のある科学研究について助言もらう

 「沖縄サイエンス・メンター・プログラム」は、OISTの学生が発案し、学生自らが運営する夏休み期間中のプログラムで今年で4連続4回目。今年は、県内計7校から21人の高校生が参加した。夏休み中、週1回の合計5回、キャンパス内で行われた。OISTの学生または研究員が1カ月の間、夏休み返上で1対1で高校生を育成・指導するメンターを務めた。

米国出身の学生が高校生に夢と希望を与える

メンタープログラムを終えて記念撮影したメンターと高校生=沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学

 対象は、科学に興味がある、科学者と交流がしたい、英語がうまくなりたい、将来の可能性を広げたいと考えている高校生。メンタープログラムを発案したのは米国出身の学生でコリン・ステッカーさん(33)だ。「ある程度の英語力は必要となるが、これまで応募者全員がしっかりとした動機を持って応募してくれているため、書類ではじくことはしなかった」と話す。

 「将来の自分を描く上で大事な時期である高校時代の経験は将来役立つ。せっかく世界トップレベルの研究機関が沖縄にあるのだから、地元の若者に還元したい」とプログラムを始めた動機を説明する。

 期間中は、自身のメンターと一緒に過ごし、興味のある科学研究について助言をもらった上で、将来の進路について相談した。OISTの共通言語は英語であり、時には筆談や身振り手振りを交えながら高校生とメンターはコミュニケーションを深めた。ラボを見学するだけでなく、実際に実験にも参加し、仕事現場を体験した。

 参加者の研究分野は、沖縄県民の遺伝子特徴の研究や、アリなどの生物の生態系モニタリング、コンピュータープログラミングに必要な数式の研究、ネットワーク・アルゴリズムの研究など、多岐にわたった。

米国出身の学生が高校生に夢と希望を与える

1カ月の成果を発表した洲鎌未空さん(中央)とそれを見守るメンター(右から2人目)=沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学

 ただ一人、離島からの参加者がいた。宮古島の宮古高校2年の洲鎌未空(すがまみく)さんはプログラムに参加するために毎回、渡航してきた。将来、OISTで研究者として働きたいという夢を持つ洲鎌さんは、イタリア出身でプロテイン工学が専門のステファノさんをメンターに、薬剤研究をした。

 「薬を研究する科学者になりたいという漠然とした夢を持っていた」という洲鎌さんは、このプログラムを通じて、ドラッグデリバリーシステム(体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システム)を専門に勉強したいという夢がより具体化した。

 そのためには、「薬以外の多くの知識が必要であることも痛感」「将来は、本土の国立大学の理工学部で学び、いずれはOISTで研究者になるという目標が明確になった」と今回の成果を振り返った。

 最終日は高校生一人ひとりが1カ月間の成果をプレゼンテーションした。英語をほとんど話したこともない高校生でも、学生や研究者に研究成果を伝えられるまで成長した。

 文部科学省は英語の資質・能力は高校卒業時に「英語の論文・専門書を読め、発表や討論ができる」とかなり高いレベルを目指している。そういった意味では今回のメンター・プログラムは一定の成果が得られたといえる。

 主催したステッカーさんは、緊張感あふれる高校生によるプレゼンテーションを温かい目で見守っていた。全員の発表が終わると高校生とメンターはピザと飲み物を囲んで懇親会を行った。ステッカーさんはこれまでやってきてよかったという充実感を味わうと同時に、「私は間もなくOISTを卒業するので、来年以降、このプログラムを取りまとめてくれる後継者を探さなければならない」と先を見据えていた。


メンター

 仕事上(または人生)の指導者、助言者の意味。メンター制度とは、企業において、新入社員などの精神的なサポートをするために、専任者を設ける制度のことで、日本におけるOJT制度が元になっている。メンターは、キャリア形成をはじめ生活上のさまざまな悩み相談を受けながら、育成に当たる。