自然を愛する心育む「ふるさとのツバメ総調査」
石川県内の全ての公立小学校6年生が毎年参加
石川県では毎年、県内の全公立小学校の6年生が、「ふるさとのツバメ総調査」を続けている。昭和47年(1972)から毎年実施され、今年で48回を数える。年々減少するツバメを観察することで、巣作りや子育ての様子を知り、同時に地域の人たちのツバメへの愛情に触れて、自然を愛する心を育んでいる。(日下一彦)
巣作りや子育てを観察、家族で環境保護学ぶきっかけに
「ふるさとのツバメ総調査」は県健民運動推進本部が実施している。調査を通して、子供たちに環境への理解を深めてもらおうとの取り組みで、愛鳥週間(5月10日~16日)の期間中の1日を使って調査した。3、4人が1グループになり、各小学校の校区内に割り当てられた地域で、ツバメ調査票を持って巡回した。今年は県内の公立小学校201校の6年生約1万4600人が参加、その調査結果が先日同推進本部より発表された。
調査票には親鳥の数や使用中の巣の数、巣の場所、古巣の数などの記入欄があり、併せて地域の人たちのツバメに対する思いを聞き取り、書き込むようになっている。今回確認できた成鳥は9295羽(前年に比べて5・3%減)、巣の数が9013個(同5・4%減)で、成鳥は5年連続、巣の数は4年連続で前年を下回り、いずれも調査開始以来最少となった。ちなみにツバメの生息数を全県レベルで調査しているのは石川県だけだ。
同本部によると、「調査結果がそのままその年のすべての生息数ではない」と断りながらも、毎年同時期に継続的に調査することで、「生息動向を知るうえでの貴重な資料になっている」と分析している。
調査がスタートした経緯は、1970年代の高度経済成長期に大気汚染や水質汚濁、自然の乱開発が相次ぎ、このままでは豊かな自然が失われてしまうのではないかとの危機感からだ。
半世紀余りの調査経過を見ると、成鳥数が最も多かったのは昭和61年(1986)の約3万7000羽で、現在は4分の1に減少。使用中の巣の数もピーク時の4割ほどに減っている。ツバメは空中を飛ぶ虫をエサにしているので、虫が発生する水田や水辺など採食場所が欠かせない。従って、都市近郊の農地が宅地化され住宅街に変わると、当然エサは少なくなる。
また、ツバメが営巣できる農家の軒先などが減ったり、防犯上、日中戸締まりする家庭が増えると巣は作れない。さらに近年、ツルツルした材質の外壁や柱が多くなり巣が作りにくくなるなど、巣作りが厳しい環境になっている。
感想文の中から幾つか拾ってみよう。「ツバメの親がヒナに一生懸命エサをあげているのを見て、親子の絆が深いと思った」と素直に感動したり、「田んぼの虫を食べてくれるいい鳥なので、たくさん来てほしい」と、益鳥との認識を新たにする声があった。
天敵のカラスからツバメを守るため「巣の下にCDをぶら下げていた」「巣が落ちないように板をつけてある」「ツバメが来る時期は車庫のシャッターを開けたままにしておく」など、地域の人たちの間でツバメを保護する姿を見て、「ツバメを大事にしてくれる人がいっぱいいてうれしかった」と安心していた。
また、心に残ったこととして、「毎日、日記をつけて、ツバメのタマゴが5つもあった」との住民の報告を聞いて、「しっかり観察していてすごい、ツバメの事が好きなんだと感じました」。さらに「毎年巣作りするのは、その家の人が優しいから」「巣のある家の人は、ツバメを子供か孫のように、かわいがっていた」など、家族同然にツバメを大切にする心を感じ取っていた。
ツバメに“フン害”は付きものだが、フンが落ちて床が汚れるのでツバメを歓迎しないと答える人に出会い、「歓迎しなくてもいいから、生き物を大切にして欲しい」と思ったり、中には「調査前はフンが嫌で巣を作って欲しくないと思っていたけれど、調査してツバメは大切だと分かった」と心の成長を感じさせる児童もいた。
ツバメ調査は子供たちの親世代も体験しているので、親子共通の話題になり、「昔はたくさんいて調査がたいへんだった」と聞かされ、家族ぐるみで環境保護を考えるきっかけにもなっている。







