日韓関係の改善は心温まる民間交流から

沖縄尚学高で韓国人中高生が日本語で弁論大会

 日韓関係が冷え込む中、学生同士の交流で関係改善のきっかけをつくろうとする動きがある。沖縄県那覇市の沖縄尚学高校で24日、韓国の中高生による日本語弁論大会が開かれた。両国の生徒が忌憚(きたん)なく語り、心温まる交流を通じて民間交流が深められた。(沖縄支局・豊田 剛)

「二重国籍」「日本のアニメ声優」「外交官」
夢を語り合うことで心を許し、相互理解を深める

 日本語弁論大会を主催したのは、両国の民間交流を推進する韓日経済文化交流会(イム・ヨンホ会長)と日韓経済文化交流会・沖縄(竹林春夫会長)だ。

日韓関係の改善は心温まる民間交流から

弁士が沖縄尚学の生徒や審査員らと一緒に記念撮影した=24日、沖縄県那覇市の沖縄尚学高校

 日本語弁論大会は10年前に沖縄で初めて開催され、今回は6回目。大会には日本語を学ぶ中高生11人が韓国全土から弁士として参加した。

 優勝したのは全州市の高3女子のアン・ウンソさん。韓国人の父と日本人の母を持つことから、彼女の選んだテーマは「二重国籍」だ。

 「日本で暮らす祖父母のところによく遊びに行っていた。最近まで二重国籍であることを知らずに生きてきた。支障がなかった。しかし、韓国の法律では22歳までにいずれかの国籍を選択しなければならず、両親と相談して韓国籍に決めた」と話した。ただ、「今まで日本と連結したものが断たれたようでぽっかり心に穴が開いたような気持ちだ」と今の心境を説明した。

 来年は日本の大学に入学することを目標にしているアンさんは、大学卒業後も日本で就職したいと願っている。「日本の名前をなくすのは寂しいので、ここ(沖縄)にいる間は日本名の高橋恩緒(みお)と呼んでもらいたい」と語り掛けると、ひときわ大きな拍手が沸き起こった。

 2位は、チョンウプ市の高3男子のイ・ジュンヒョクさん。日本語を勉強して1年未満とは思えないほど流暢(りゅうちょう)に話し、聴衆の心をくぎ付けにした。

日韓関係の改善は心温まる民間交流から

韓国の生徒が最も楽しみにしていたという沖縄尚学の生徒との交流の時間=24日、沖縄県那覇市の沖縄尚学高校

 「勉強も運動も嫌いで、家で日本のアニメを見たりゲームをすることが好きだったが、ある時、自分自身に厳しい目標を課した。それは日本アニメの声優になることだ」とイさん。将来の計画を両親に話すと、両親は「おまえに夢ができたことをうれしく思う」と言ってくれたと話し、「日本のアニメと声優は私の恩人だ」と強調した。

 3位に入賞した全州市の中3、イム・スチャンさんは、外交官になるという夢を語った。父親は韓国人で母親が日本人のイムさんは、「両親はけんかをすることもあるが、仲良く暮らしている」と前置きした上で、「国同士も家族のように話し合い許し合えば世界が平和になるのではないか」という思いから、外交官になりたいという夢を持つようになったと力説した。日韓関係については、「悲しい歴史のせいで両国はお互いを理解しようとしない。お互い許す心で問題を解決したい。日頃ニュースを見ている。間違った判断をしないようにもっと政治、文化、歴史について学びたい」と締めくくった。

 弁論に先立ち、来賓を代表してあいさつした國場幸之助衆院議員は、昨今の日韓関係を踏まえて、「観光は平和のパスポート。今こそ、お互いの絆を深めていくことが大切。お互いの言語を学ぶことが文化交流に直結する」と述べた。

 沖縄尚学高校校長で理事長の名城政次郎氏は、「韓国と日本の未来というテーマは時宜を得たものだ。必ず両国の素晴らしい絆がつくられる。生徒が将来を見据えて、先駆者として頑張ることを期待している」と激励した。

 弁論大会の後、出場者と沖縄尚学の学生が交流会を行い、お互いに持ち寄ったお菓子を食べながら自己紹介した。引き続き、那覇市の国際通りを生徒が案内し、最後はお互いに涙して別れを惜しんだ。

 沖縄尚学高校国際文化科学コース1年の三浦ミミさんは、「隣国でありながら、韓国の学生と交流する機会はこれまでなかった。このイベントを通じて韓国人と友達になって、ぜひ韓国を訪れたい」と語った。