研究課題を策定し生徒の学力向上へ実践活動

北海道・南幌中学校で公開授業研究会

 道都・札幌から車で東に40分ほど走ると田園風景が広がる南幌町に至る。今では札幌への通勤圏となっているが、同町内の町立南幌中学校で10月31日、「基礎・基本を習得し、自ら考え表現する生徒の育成」を研究主題とした公開研究会が開かれた。生徒の学力向上を図るため、同校では3年計画で年次ごとにそれぞれ研究課題を策定し授業に取り組んでいる。今年は3年目に当たり、これまでの実践活動を公開授業として展開し、評価を募った。(札幌支局・湯朝 肇)

主体的学び目標にICTやグループ学習を積極導入

研究課題を策定し生徒の学力向上へ実践活動

公開授業で数学の問題に自分の考え方を発表する女子中学生=10月31日、北海道・南幌町立南幌中学校

 「n角形の内角の和を求めるときに、三角形の内角の和180度を使うのだけれど、どうやって対角線を引いたらいい」―数学の授業を担当した砂沢悠太先生は、電子黒板を活用しながら五角形に2本の対角線を引いて三角形を三つ作る。「五角形の中に三つの三角形ができるので、180度×3にすると540度が出てくるよね」と説明する。すると、1人の女子生徒がすかさず手を挙げ、「先生、別に三角形を三つ作らなくても1本の対角線で三角形が一つと四角形が一つできるので、180度+360度で540度になります」と発言。砂沢先生は、感心したように「確かにそうだね。そう考えた人は他にいるかな。手を挙げて」と見渡す。

 この日の数学の授業の課題は「平行と合同」の中の「n角形の内角の和」。その公式(n-2)×180を生徒に理解してもらうため、さまざまな図形を電子黒板に書きながら説明していく。ちなみに、同校では2学年2学級だが、数学科の授業においては「じっくりコース(標準)」2クラスと「ぐんぐんコース(発展)」1クラスの3クラス体制を取っている。いわゆる習熟度別に少人数指導による授業を進めているのだ。この日の公開研究会では数学では3クラスとも「n角形の内角の和」に取り組んだ。ただ、「ぐんぐんコース」では、(n-2)×180の公式以外に180n-360の公式についても取り上げ、さらに深い内容を学習した。

 公開研究会での授業は、数学の他に英語「外国人に私たちの町を紹介しよう」と美術「鑑賞~風刺画を読み解く」が披露された。中でも英語の授業は3年生が対象で、先生は日本語を使わずに英語で生徒に話し掛ける。グループごとに分かれた生徒たちは南幌町の資料を見ながら話し合い、紹介したい名所や特産物の特徴を英語に直し英文を作り、グループの代表が発表するというもの。生徒が電子黒板を使って発表する様子はといえば、物おじせず“慣れたもの”という印象だ。

研究課題を策定し生徒の学力向上へ実践活動

公開授業で評価を話し合う教育関係者=10月31日、北海道・南幌町立南幌中学校

 公開研究会が終わった後は授業の評価を行う。札幌市内をはじめ、近隣の学校から教育関係者約70人が集まり、良かった点や改善すべき点などを挙げていく。その中で数学の授業については、北海道立教育研究所研究主幹の竹内結美さんが「3クラスの少人数で指導できるのはとても素晴らしいこと。また、電子黒板などICT(情報通信技術)を上手に使って印象深く、生徒に分かりやすく進めている。一方、グループ学習などで対話的学習を進める場合、実際のところ時間が少なくなる傾向にある。また、そうした学習と教科書をどうつなげていくかといったところも見ながら授業を進める必要がある」と指摘する。

 南幌中学校は昨年度から空知教育局から空知管内学力向上推進事業実践校に指定されている。今回の公開研究会について同校の田村和幸校長は、「当校では生徒一人ひとりが学習の基礎・基本を習得し、自ら表現することを目標とすると決め、そこに到達すべくICT機器などの使用やグループ学習などを積極的に取り入れてやってきました。何よりも先生方が機材を上手に使い情熱をもって生徒に接しており、その成果として生徒の学力も上昇してきました」と語る。

 同中学校は来年度も同推進事業実践校の指定校となるための申請を行う予定。そのためにも、さらにバージョンアップして学力向上に向けた取り組みを計画している。ICTを取り入れグループ学習で授業を行う、「主体的・対話的で深い学び」いわゆるアクティブラーニングは現在、道教委が積極的に推し進めているが、同中学校は一つのモデルケースと言えよう。