障害児の就職支援に貢献
沖縄初のコーディネーター 翁長 克さん
少子化により子供の数が減る中で、身体障害または知的障害を持つ生徒が通う特別支援学校の数は増え続けている。沖縄県は現在、特別支援学校の生徒の就労支援に積極的に取り組んでいるが、そこにはコーディネーターの努力が欠かせない。(那覇支局・豊田 剛)
「できることをいかに伸ばすか」を徹底
文科省によると、特別支援学校高等部の卒業生の進路は2012年度は、知的障害児で福祉施設が66・7%、民間企業などへの一般就労が28・4%、肢体不自由児では施設が80・4%、一般就労が10・5%となっている。大半は福祉施設に入所しているのが実態だ。
「障害者雇用促進法」では、民間企業は従業員の一定比率に当たる障害者を雇うよう義務付けられている。この「法定雇用率」は13年に1・8%から2%、今年は2・2%に引き上げられた。また、対象となる民間企業の規模も従業員50人以上から45・5人以上に引き下げられた。
今後も法定雇用率が引き上げられることが予想される中、特別支援学校も就労対策に力を入れている。
沖縄の障害者雇用率は現在、2・43%に達し、法定雇用率を超え、1・97%の全国平均をも上回っている。また、特別支援学校の生徒で一般就労する割合は32・2%で全国平均以上になっている。
これに大きく貢献しているのは沖縄で初めて障害児の就職支援コーディネーターを務める翁長克氏だ。13年に企業向けにコンサルタント会社を立ち上げた。その当時、沖縄の特別支援学校生徒の就労率は全国平均を下回り、就労の取り組みも遅れていたが、劇的に状況を改善させた。
翁長氏の取り組みは、教師、保護者、生徒への講演以外に、特別支援学校の生徒を受け入れる企業の開拓がある。特別支援学校で就労支援を始めた当時の就労率は約20%。離職率は約40%だった。1年後には、300人余の支援学校卒業生のうち、一般就職希望者が100人を超え、50人が就職できた。16年には就職希望者のほぼ全員が就職できた。そのうち、1年以内の離職者は、わずか9%だ。
大事なのは、「学校教育で社会人になることのイメージを付けさせることだ」と翁長氏は強調。「(軽度知的障害を持つ)高等特別支援学校の生徒には、彼らなりの特性があり、その特性に合った企業や職種にマッチングさせることが大事だ」という。象徴的なのは、人と接するのが苦手だが物覚えが早いケースだ。就職活動するに当たり、「できないこと認めながら、できることをいかに伸ばすか」という考えを徹底している。
支援学校の生徒は「法律や社会に守られる」だけでなく、積極的に社会参画するよう促している。「社会の一員として自覚することが自信になり、自己肯定感も養われる。そのためには仕事をすることが大切だ」。保護者に対しては、文字通り「保護」するのではなく、応援する立場に立ってほしいと要望している。
沖縄の高等特別支援学校では卒業するまでに7回程度、就労体験を実施している。1年は本人の希望、2年では教師らが勧める仕事を、3年では実際に就労の可能性のある企業・事業所に行くケースが多い。単なる体験で終わらせず、必ず評価を付け、何が達成でき、何が達成できなかったのかを明確にしている。回を重ねるごとに成長するような仕組みができている。
翁長氏は、講演活動の中で強調することがある。「身だしなみ、あいさつ、返事、報告連絡相談ができるコミュニケーション力を養うことが大事」だということだ。最低でも家でこうした基本事項を身に付けさせるよう、生徒と保護者に訴えている。
こうした実践および啓蒙(けいもう)活動をすることで、一般高校の就職希望者よりも就職率が高く、離職率が少ない結果になったと考えられている。高等特別支援学校の生徒に対する企業の評価は高まる一方だ。
障害者雇用促進法
企業や国、地方自治体などに一定割合の障害者雇用を義務付ける法律。1976年に身体障害者を対象に制度が始まり、段階的に拡大された。従業員・職員に占める障害者の割合が法定雇用率を下回ってはならないと規定している。企業の場合、下回れば納付金を徴収され、上回れば調整金が支給される。2017年度は50%の企業が法定雇用率を達成した。18年4月から法定雇用率は企業で2・0%から2・2%、国・自治体で2・3%から2・5%に、それぞれ引き上げられた。






