中学入試にジェンダーフリー?
先日、通勤電車に乗っていて驚いた。進学塾の日能研が、私立中学校の入試問題を紹介している広告を見てだ。
都内の私立中学の「トイレマークの“?”」という社会の問題だった。国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」の中の「ジェンダー平等を実現しよう」を示して、「ジェンダーとは、社会的・文化的につくり上げられた性別に対するイメージのことで、このアイコンはその決めつけられたイメージから自由になることを求めています」と説明する。
そして、公共の場所でトイレの位置を示す男性と女性をかたどったマークを見せて、「私たちが日常でよく目にするトイレのピクトグラムですが、ジェンダーの視点から問題が指摘されることがあります。何が問題とされるのか、考えて説明しなさい」と質問している。
解答例を日能研のホームページで調べてみると、「男性がズボンをはき、女性がスカートをはくという先入観を与えてしまう」とあった。解説には、「(今のトイレの表示は)スカートをはいているかどうかで、男女の違いをあらわしています。しかし、女性は必ずしもスカートをはいているわけではなく、…つまり、スカートは女性、ズボン(パンツ)は男性というのは、社会的・文化的につくられた女性像、男性像であり、ジェンダー平等の点からは問題だという指摘があります」と説明されている。
これで思い出したのは、2000年代前半に流行したジェンダーフリーだ。性差まで否定するようなジェンダーフリー教育は、当時多くの批判を浴びた。
おそらくこの中学校では、男女平等の大切さを伝えたいと考えたのだと想像する。それ自体には筆者も同意する。だが、男女の違いを示したマークから「つくられた性差だから問題」だと考えさせるような入試問題が、本当に男女平等を伝えることになるのか。筆者には理解できなかった。(誠)