札幌市で「T-1グランプリ」を開催
“日本茶博士”を目指して小学生が奮闘
お茶といえばペットボトルで売られるものが珍しくなくなっている昨今、家庭でお茶を入れる文化が薄くなっている。茶の作法は日本文化の根底にある「おもてなし」を体現しているといわれるが、そんなお茶の良さを子供の頃から知ってもらおうと「T-1グランプリin札幌」(主催、同実行委員会)がこのほど札幌市内で開催された。市内の小学校から参加した90人余りが筆記試験や実技を通して競い合い、“日本茶博士”を目指した。(札幌支局・湯朝 肇)
「おもてなし」の伝統に接する、筆記や分類・作法の試験も
「お茶の歴史は非常に古く、奈良・平安時代に日本に伝わったといいます。お茶はお客様を迎えるための“おもてなし”の飲み物でした。きょうはこれまで勉強してきた知識と練習を積んできた実技作法を思う存分発揮してください」――7月8日、札幌市内で開かれた「T―1グランプリin札幌」で、開催に当たりあいさつした井上隆・北海道茶商組合理事長は、参加した小学生を相手にこう語って励ました。
札幌市内の小学校から130人を超える参加希望があったが、絞り込んで91人が参加した。「札幌市内の各小学校に開催を通知しまして、参加者には事前にお茶に関する“教科書(のようなもの)”と練習用の茶葉を送り、それでお茶の歴史や産地に関する知識を覚えてもらい、お茶の入れ方を学んでもらいました。参加者を絞り込んだのは、会場の広さと運営をスムーズにさせるため」(同事務局)という。
子供たちが勉強する教科書には、お茶の歴史などの他、お茶の成分や北海道のお茶に関するものなど45の説明文、お茶の種類や入れ方などおよそ15㌻にわたって綴(つづ)られている。
競技はまず、20分ほどの筆記試験の後に、実際に8種類のお茶を見て、それぞれの種類名を当てる。さらに、急須を使って、審査員にお茶を入れる実技競技を通して、その合計点でグランプリを決めるというもの。ちなみに審査員は日本茶インストラクター協会に所属しており、子供たちの一つ一つの動作を項目ごとにチェックしていくというから本格的だ。
筆記試験を終えた子供たちは、場所を移動してお茶の種類を見極める。普通の煎茶、深蒸し煎茶、蒸し製玉緑茶、玉露、ほうじ茶、玄米茶、粉茶、抹茶など大人でも細かい分類を区別するのは難しい。与えられた4分間で茶葉の香りを嗅いだり、手触りで見極め、用紙に記入していく。
競技そのものは4人一組の団体戦と個人戦があり、団体戦では札幌市立西岡小学校チーム、個人戦では札幌市立しらかば台小学校6年の佐藤昌弥君が見事優勝した。優勝した佐藤君は、「何度も練習したので優勝できてうれしい。おばあちゃんや家族の皆にも入れてあげたい」と語った。
会場には子供の様子を見詰める保護者も多数訪れ、札幌市立桑園小学校5年生の武田清修君の父親・清賢さんは、「去年は抽選に外れて出られなかった。参加が決まった今回は家族で一緒に勉強しました。息子は筆記試験が満点だったので良かったと思います」とうれしそうに、息子を褒める。
小学生を対象にしたT―1グランプリは、日本茶の良さを知ってもらおうと宮崎県都城市の茶販売業者が2007年に行ったのが始まり。北海道は10年に1回目を開催、今年で9回目を迎えた。優勝した佐藤君と西岡小学校のメンバーは後日、後援団体の一つである札幌市教育委員会を訪れ、優勝の報告と日本茶の作法を披露した。
同教育委員会は、「日本茶の良さを普及することは日本文化を継承し、さらに小学生を対象にしたこのグランプリは次の世代に受け継がれていくもの」としてこの大会を後押ししている。







