北海道博物館で「野幌森林公園いきもの図鑑」展
札幌近郊に生息する豊かな生き物
札幌近郊にある野幌森林公園は、道立自然公園に指定されて今年で50年目を迎える。その記念事業として北海道博物館は4月27日から1カ月余りにわたり「野幌森林公園いきもの図鑑」展を開催している。同森林公園の広さは2053ヘクタールに及ぶが、そこに生息する動植物を紹介。展示数は昆虫から植物、野鳥まで全部で1万数千点になる。豊かな自然が現存する同公園内の多様な生き物たちの生態が明らかにされる。(札幌支局・湯朝 肇)
地域の環境の変化と多様な生態知る機会に
「大都市の近郊にこれほど広い森林公園を有しているところは日本各地を見ても珍しい。2013年から17年までの5年間に森林公園内の植物を調査したが、そこでは新たに80種の品種が確認された。調査を続けることで、新しい発見とともに地域の環境の変化が分かってくる。それらの成果を広くお知らせしたい」―4月27日から6月3日まで北海道博物館で開催される「野幌森林公園いきもの図鑑」展が開催されているが、開催前日の報道機関向けの説明会で博物館学芸員の水島未記氏は展示会の意義を語る。
今回の展示は、昆虫、植物、脊椎動物の三つのコーナーに分かれ、昆虫が約1万点、植物が約250点、脊椎動物が約70点展示されている。その中には、日本固有種で北海道でのみ生息するオオルリオサムシや2012年に新種に指定された甲虫「ヨシタケオオタマキノコムシ」といった昆虫や、植物コーナーでは今回の調査で初めて確認された「ヒメニラ」「エゾヤナギ」「ワニグチソウ」などが並ぶ。
2000ヘクタール以上の広さを持つ野幌森林公園は1968年に北海道100年を記念して、「北海道立自然公園」に指定された。190万都市・札幌の他に江別市、北広島市の3市にまたがる野幌丘陵に広がる同公園の約8割は国有林で鳥獣保護区になっている。樹木数は約110種、野草は500種以上、キノコ200種以上、野鳥140種以上の他にエゾリスやユキウサギなど北海道の固有種が多数生息する。まさに生き物にとっては「ゆりかご」のような場所といえる。
今回の展示で植物を担当している水島氏は同森林公園の地理的条件について、「南方系と北方系の植物が見られる地域にあり、ため池があるなど環境が多様なこともあって植物の種類は非常に豊富。ただ、盗掘や環境の変化もあって減少したものや絶滅したと考えられる種もある。さらに近年は外来植物の種類も多くなっている」と話す。
ところで外来種という観点で言えば脊椎動物にも当てはまる。例えば、クロテンとニホンテン。同じテン属に属する仲間であるがクロテンは北海道にのみ生息する種類で、その毛皮は古くから大陸との交易品として使われていた。ところが、太平洋戦争の頃、毛皮生産のためにニホンテンが導入され、それが野生化して広がっているというのである。同博物館学芸員の表渓太氏は「野幌森林公園内でクロテンの生息は確認されています。ただ、ニホンテンが定着すればクロテンは姿を消すといわれています。2018年には公園10㌔㍍以内でも確認されており、近年中に同公園にも到達するかもしれません」と警鐘を鳴らす。
今回の展示に当たっては、2013年から17年までの5年間にわたる「野幌森林公園の生物インベントリー調査」を行ったが、そこでは野幌森林公園植物調査の会や北海道クロテン保存手法検討チーム、北海道トンボの会といった市民グループと連携して調査研究を行った。身近な地域にある自然公園の生き物を探ることは、生物の多様性を知る一歩となることは間違いない。







