雪合戦応用した「スノーシューター」 “厄介モノ”を利用し冬場に運動

 東京で言う「冬の季節」が半年近く続く北海道。どうしてもこの期間は家にこもりがちになり、児童生徒の体力低下が心配される。事実、北海道における小中学校の体力テストの結果を見ても冬場は下がる傾向にある。そこで北海道「雪」プロジェクトは冬期間に適した授業を立案、それに即した公開授業が1月26日、札幌市内の小学校で開かれた。(札幌支局・湯朝 肇)

児童がルールを決め作戦会議、札幌市内の小学校で公開授業

北海道で“厄介モノ”を利用し冬場に運動

体育の公開授業「スノーシューター」に打ち込む児童生徒たち

 「おとりで右に行くから左に回って的に当ててね」と語るのは、札幌市立新琴似北小学校(小笠原啓之校長)4年2組の児童たち。冬休みが終わって、今年最初の体育の授業。雪が50㌢ほど積もった校庭に約30人の生徒が集まり、グループごとに雪合戦を元にしたゲーム「スノーシューター」を行った。

 横16㍍縦30㍍四方の雪原コートに3角柱の的を立て、基本的に雪玉を持った4人の攻めに対し1人の守りが雪玉をもって的を守るというゲーム。使える雪玉は攻め、守りがそれぞれ24個。雪玉を持った攻めのチームが、コート奥にある「的の側面」に雪玉を当てれば勝者となるが、守りのチームが投げた雪玉に当たれば、攻めの人はコートの外に出なければならないというルール。コートの中には段ボールで作られた壁があり、その壁を攻略することが勝敗につながる。土のグラウンドと違って、雪の上やぬかるみを走るため、どうしても動きは鈍くなるが、それでも子供たちは白い息を吐きながら元気よく駆け回る。

 この日は公開授業のため、保護者や札幌市教育委員会、市内小学校の教師、さらに北海道教育大学の学生らの見学もあり、白熱したゲーム展開を見せた。実はこの日のゲームでは、各グループごとに“マイルール“なるものを作っていた。

北海道で“厄介モノ”を利用し冬場に運動

公開授業の後の雪に関する学習研究会

 すなわち、攻めが4人に対し守りが2人、あるいは守りが3人といったケースや、守りを3人にした場合にはそのうち2人はコート外からしか雪玉を投げることができない、などといったルールをあらかじめ決めていた。

 これについて担任の高橋俊成教諭は、「“ゲームに参加する誰もが楽しめるように”というのがコンセプトです。公開授業に入る前に生徒自らルールを考え、グループで作戦を練ってきました」と語る。例えば、生徒から「攻めと守りの人数の割合が4対1では守る方が大変である」「守り3人がコート内に入れば攻める方が的を射止めることが難しくて楽しめない」といった点が挙げられ、冬休み前に実践しながら生徒自ら、それらをルール作りに生かしていったという。

 公開授業はおよそ40分。ゲームの後はそれぞれのグループで反省点や感想を述べ合ったが、「こういう授業なら何度でもやりたい」と語る生徒がほとんど。雪国ならではの公開授業となった。

 ところで北海道「雪」プロジェクト(代表、高橋庸哉・北海道教育大学教授)は北海道教育大学を核に道内の教員や学芸員、雪の研究者らが集まり、北海道で最も身近な素材である雪や雪にまつわる文化を教育の場で活用するために研究開発や普及活動を行うことを目的に2001年に結成された。これまで雪に関する教育実践研究や雪学習のためのワークシートおよびテキスト、プラン集の刊行など積極的に提案している。公開授業を含めて同プロジェクトが行ってきた雪の学習研究は今回で16回目を迎える。

 この日も公開授業の後で北海道雪プロジェクトによる教育実践の提案報告が持たれた。札幌市内の小学校で教鞭(きょうべん)を執る教師3人が「雪のお話発表会に向けたプレゼン指導の極意」(朝倉一民・屯田北小学校教諭)、「『寒い季節を快適に』(5年家庭科)のテキストと授業作り」(筑田詩織・百合が原小学校教諭)、「授業で使える『雪活用資料集』紹介」(福本勇太・屯田北小学校教諭)をテーマに語った。

 北海道雪プロジェクトのメンバーの一人でもある小笠原啓之校長は、「かつて雪は北海道民にとって厄介者のようにみられてきましたが、最近では一つの大きな資源と捉えられつつあります。それは教育の現場も同じで、雪は子供たちに大きな魅力を与える教育資源になっていくでしょう」と語る。