手強い豪雪に“助っ人”フル稼働
金沢市で大学生が雪かきボランティア、市が町内会との仲介役に
金沢市には「学生等雪かきボランティア」というユニークな事業がある。文字通り、市内の大学に通う学生たちに、ボランティアで雪かき作業を手伝ってもらう取り組みだ。この冬は記録的な大雪に襲われ、学生たちは高齢者の多い中心市街地や小学校の通学路などを除雪し、頼もしい“助っ人”として地域の人たちに感謝された。(日下一彦)
地域から感謝、「ありがとう」に充実感
金沢市の中心市街地は、戦災や大震災を受けておらず、藩政期以来の細い街路が網の目のように広がっている。しかも、生活の拠点が郊外に移っているため高齢化が進み、この冬のように大雪に襲われると除雪作業が困難になる。
そこで、平成18年度から市民局市民協働推進課が窓口になり、除雪の必要な町会に対して雪かき作業を手伝ってくれる学生グループを募り、割り当てる事業を始めている。毎年10月中旬、金沢大学や金沢学院大学、北陸大学など市内にある6大学の部活動やサークル、ゼミなどに呼び掛け、グループ単位で登録してもらう仕組みだ。今年度は昨年12月3日、「金沢学生のまち市民交流館」で協定締結式が行われ、16の団体が地域と協定書を交わした。
その中身は、同推進課が仲介して各ボランティアグループと町会を組み合わせ、三者による「雪かきボランティア協定」を締結する。作業期間は雪の積もる毎年12月から2月までの3カ月間で、地域から除雪作業の要請があった日に実施することになっている。
同課では仲介役の他に、学生と地域がスムーズに連携できるように連絡・調整を行い、学生への活動謝礼(交通費相当)の支払い、スコップなど雪かきグッズの貸し出しを担当している。雪かきの具体的な作業方法は、地元の町会役員らが指導する。また、作業中のケガなどに備え、学生はボランティア保険に加入し、その保険料は市が負担する。さらに学生側が申請すれば「ボランティア証明書」も発行している。
この冬は積雪が一時90㌢近くになり、同推進課によると、2月15日までに参加した学生数は延べ390人になった。活動回数は24回を数え、これまで最多だった平成23年度の17回189人をはるかに上回った。ちなみにこの年の積雪は最大64㌢だった。今回はそれをはるかに上回り、大雪のすさまじさが表れている。学生たちは7、8人が一つのグループになって、重機の入らない狭い生活道路や一人暮らしの高齢者宅の玄関先、小学校の通学路などを除雪していった。
活動の一例を見ると、金沢大学の学生15人から成る「小立野雪かき隊」は、兼六園(国特別名勝)近くの小立野町会連合会の要請を受けて、先月28日午後1時、小立野公民館に集合。同連合会会長の高野健三さんから「けがをしないように、無理のない範囲で頑張ってください」と激励を受け、1時間余りにわたって小立野小学校の通学路を雪かきした。高野さんによると、歩道に雪が積もると児童が車道を歩くため、危険だったという。
通学路は圧雪され、時折、幅1㍍近い氷の板を取り除くこともあった。同雪かき隊の代表で、大学院生の和田拓也さんは「雪が硬くてきつい所もあったが、地域の方と交流できて良い経験になった。少しでも年配の方の力になれば」と話していた。
また、繁華街に近い大工町の町会から要請を受けたグループは、圧雪した路面に苦心した。車が行き来して雪が氷のように固まり、おまけに氷点下の気温が連日続いて、氷が解けず20㌢ほどの厚さになっていた。学生たちはツルハシやシャベルを持って雪を砕き、住民と協力しながら道路脇によけていた。
大工町の岩井幸吉町会長は「凍っていると、長い通りを雪かきするのは大変です。若い人に応援してもらうと助かりますね」と喜んでいた。学生の間からは、「地域の方々と仲良くなれてとても良かった」「『ありがとう』と言われて充実感があった」などの声が聞かれた。地域住民との交流が深まるにつれて、「このまま金沢で就職したくなった」との声も出ていた。