削って確かめよう アンモナイト

「ちゃれんが子どもクラブ」体験教室

 今から6500万年以上も前に生息したアンモナイト。かつては北海道でも炭鉱周辺で相当数のアンモナイトの化石を見つけることができた。現在では各地の博物館や資料館で数多くのアンモナイトが展示されている。もっともアンモナイトがイカやタコなどの仲間だとは意外に知られていない。北海道博物館では小中学生を対象とした「ちゃれんが子どもクラブ」体験教室で実際にアンモナイトがイカやタコの仲間であることを確かめてみた。(札幌支局・湯朝 肇)

巻貝と違う イカやタコの仲間

削って確かめよう アンモナイト

アンモナイトを一生懸命に紙やすりでこする子供たち

 「アンモナイトを削っていったら、何か模様のようなものが見えてきたよ」-札幌市の郊外にある北海道博物館で9月16日、「ちゃれんが子どもクラブ」の体験行事の一つ「アンモナイトを解剖しよう」をテーマにした講座が開設され、参加した約40人の小中学生が一生懸命にアンモナイトを紙やすりでこすりながらアンモナイトの構造を調べていると、一人の小学生がこう叫んで言った。

 アンモナイトは中学校の理科の教科書にも登場する、デボン紀初期の4億年前から6500万年前の白亜紀に生息したといわれる示準化石の代表格。大きいものになると1㍍以上になるものもある。今回の講師となっている北海道博物館の圓谷昂史・学芸員は参加した子供たちに向かって、「アンモナイトは巻貝か。それともほかの生物なのか」と問い掛け、「その答えを知るために、きょうはアンモナイトを紙やすりでこすりながらアンモナイトの内側を調べてみよう」と語った後に、紙やすりの使い方を説明した。最初はアンモナイトを軽く水に濡らし、目の粗い紙やすりを使って20分ほど擦る。次に中くらいの粗さの紙やすりを使って擦る、最後に細かな目の紙やすりを使って磨いていく。アンモナイトを横にして半分ほど削っていくと、きれいな模様のついた断面が見えてくるのである。もっとも、小学校低学年の子供の中には、擦ることに飽きてしまい、代わりに同伴した保護者が一生懸命になって削るという光景もあちこちで見られた。

 きれいに削られたアンモナイトの断面を見ると、渦巻き状の筒が一つ一つ部屋のように仕切られているのが見えてくる。その様子を見ながら、圓谷さんは「巻貝の殻の中はアンモナイトに見られる隔壁のようなものはなく、殻の中は空洞のように一つにつながっている。それを見てもアンモナイトと巻貝は違う仲間だということが分かる」と説明。

削って確かめよう アンモナイト

削った後のアンモナイトの断面

 その一方で圓谷さんは、現在生きている生物で貝の中でアンモナイトに似ている生物として、まずオウムガイを挙げ、パワーポインターを使ってその内側を映し出す。オウムガイの内側はアンモナイトと同じように隔壁で仕切られているのである。さらにオウムガイと同じように頭足類と呼ばれるイカやタコを挙げ、実際にイカを解剖して、イカが口部に持っている顎器(がっき)と呼ばれるものが、アンモナイトにもあったことから、アンモナイトは巻貝より、むしろ頭足類に近いと説明する。

 今回、参加した札幌市内の中学生の一人は、「父とよく化石採りに行きます。今回も一緒に父と参加しました。実際に本物のアンモナイトを削ることができてうれしい」と話していた。

 「ちゃれんが子どもクラブ」の「ちゃれんが」とは、北海道博物館の愛称。同クラブでは年間12回にわたって体験教室を開催しており、アンモナイトをテーマにした講座は今年度では今回が最初。次回は「アンモナイトのレプリカを作ろう」(10月7日)、「太古の絶滅生物・アンモナイトの復元」(2018年1月28日)をテーマに予定している。圓谷さんは、「太古の生物も現在、生きている生物と比べてみるとよく分かることがある。身近なものでも不思議なことや疑問に思うことがたくさんあるはず。そこから科学的な思考が生まれていく」と話し、“科学する”ことの大切さを訴えた。